川の語源

「沢(さは)」の語源を「狭川(さ-かは)」と考えてきたのに、肝腎の川の語源に実感が持てない。長い閒もがいてきたのにぴったりするものがない。これまでの経過やら、今考えているものをちょっとばかり披露してみたい。川(カハ)の語源説として私に刺さっているのは次の二例。

1 水が日夜カハルものであるから

2 ガハガハという水の音

皆さん如何ですか。いずれ劣らぬ仮説と言ってよい。川の流れをずっと眺めて居られる私にとって、特に1の方は魅力を感じる。ただ余りに嵌り過ぎて、ちょっと腑に落ちていないところがある。『方丈記』の一説に「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」とある。確かに水の流れは一時として同じではないが、この場合はなにか達観した人の解釈のように感じなくもない。少しばかり哲学的過ぎるかな。

私は今2の「ガハガハ」という音を中心に組み立てている。これまで殊更に水の音を意識することはなかったけれど、いい機会なのでじっくり吉田川で聞いてみた。場所によって音が変わることに気づく。

堰堤から水が落ちるような所では、空気を含んだ大量の水滴が落ちる音の集まっている感じ。長靴で水たまりを歩くに似て、奥の方にチャプチャプというような音が隠れている風である。これは末尾に[p][ph]から[h]或いは[b]を含むと言えるかもしれない。

広がった水が集まって川床を削るようなところでは、「ガウガウ」「ゴウゴウ」というような感じで、表面では騒がしく水が落ち、水量が多ければ奥に有声音が聞こえる。「ガ」「ゴ」のような音は石と川床の岩とがぶつかるときに起きそうなので大水が出た時にはっきりするが、ちょっとした水が出る時にも当てはまりそうだ。

学校裏の三島岩辺りだと、水量の多い時には直接に「ドウドウ」「トウトウ」のような打つ音が聞こえる気がするし、又広がってゆるやかになる瀬では砂がこすれるような「サラサラ」「サー」「ザ―」というような音も感じられる。

かくの如く川の音と言っても一様ではないので、語源説に結び付けるのはやっかいだが、水量が多くて落下する音が聞こえるような場所なら「ガハガハ」、水量が少なければ「カハカハ」というのもありかなと思う。                                               髭じいさん

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