曽のつく地名

明宝地区にある水沢上(みぞれ)から出発して、少なくとも岐阜県では「沢」を「そ」と読まれることが多いことを示してきた。更に「平曽」「味曽」「木曽」などの「曽」が「沢(ソ)」からも解釈できると考えた。

これらの他にも「曽」のつく地名が結構ある。この辺りの難解地名を解明するには、各方面からアイデアが出され、さまざまな議論が活発に行われる必要がある。こういった活動によって徐々に仮説が深化していく。

今回は基本に戻って、これまで取り上げてこなかった地名から大まかな方向性をつかんでいきたいと思う。

1 鍋曽(なべそ) 旧益田郡金山町東地区など

2 岩曽(いはぞ) 旧恵那郡靜波村など

3 早曽(さっそ) 旧恵那郡古川町太江など

4 乱曽(らんぞ) 旧恵那郡陶村河戸など

5 つべたぞ、つへたぞ等 旧益田郡高根村中之宿

この他井ノ曽、舟曽などがあり、「すげ曽」「栃曽」など「植物名+曽」も目立つ。

1の「鍋」は崩壊地名につくことが多く、大水で大きながけ崩れなどを起こしたと想像できる。2の「岩」は水流が土砂を流してしまい、荒々しい岩場を流れているのではないか。3の「早」は文字通り、急斜面を下って流れが速いことに間違いあるまい。4の「乱」はラ行で始まる地名であり、個人名や仏教或いは漢語に関連するもの以外はそれほど多くないが、大水が出ると暴れ川になる様子が想像できる。5の「つべた-ぞ」は「冷た-ぞ」であり、水と関連することを疑うのは難しい。これらの他、井ノ曽は水源が泉などで普段それほど流れていない様子を表し、舟曽は舟で渡るというよりは舟用の材を下ろすというような意味かもしれない。これまで上げた用例ではすべて水や沢に関連するだろう。

また「すげ曽」「栃曽」などの植物も谷や沢沿いに見られるものなので、「曽」が水に関連する蓋然性が更に強まる。阿曽田(あそだ、恵那郡阿木村)はまた手ごたえのある解釈をできていないが、「あそ」を「あし-そ」と見れば、やはり水辺の植物名と解することもできる。                                               髭じいさん

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