シウド

今回は私にとって最も難解な地名の一つに取り組んでみたい。地名としては郡上、飛騨を合わせて二十例ぐらいだろうか。カタカナ表記が殆んどで、漢字表記では周戸、秀戸(シュウド)とみられ五例ほどある。

地名が漢字で表されている場合は、それぞれの地において長年使われ、解釈が定着していることを示す。地形地名であれ、文化地名であれ、地元で長年通用しているわけだから尊重されるのは当然である。

ところが今回取り上げるシウドは、シウト、シウトウなど類似するものを含め、殆んどカタカナで表記されている。語源は勿論、意味も不明になってしまったことになる。こうなってしまうと、周戸、秀戸(シュウド)の漢字表記が原形を残しているのか、意味不明になってしまった後に解釈されたものなのか分からない。

かくなる上は用例を出来るだけ集め、互いに比較検討した上で、仮説を組み立てる他なくなる。

「シウド」は、「シウノ木」「しうず」などの用例から、私は「シウ-ド」と分けてみた。「ド」は「谷戸(たんど)」などの「戸」で、入口という意味である。これには異論があって、「シシウド」を「シ-シウド」と解することがある。自説に確信がある訳でないので無視できないが、「シシ-ウド」と考えることも出来るので俄かに賛成していない。

それでは「シウ」はどういう意味なのか。これが難解なのだ。古語として「しふ」「しう」は「癈ふ」で「器官の働きを失う」「五感の機能を失う」等なので、これで「シウド」という地名をすんなり理解できるとは思えない。

私は「シウノ木」の用例から植物名ではないかと考えてみた。それも草類ではなく木本である。食べ物として生活に密着し、音から連想できたのは次の二つ。

1 しひ (椎の木)

2 茱萸 (シュユ グミの木)

原形を「しひ」とすれば、「シヒ」から「シウ」へ音変化したことになるが、他に類例が見つかっていない。「シヒ-ド」とすれば、音便化して「シウド」「シュウド」になる気がするものの確信が持てない。

「茱萸(シュユ)」を原形とすれば、音変の説明は可能としても、難しい漢語を語源にするのかという不安がある。

「周戸」は郡上で地名のみならず、姓としても使われる。福井県大野市穴馬の上半原を起源とする説を聞いたことがある。これでよければ、大野で音変化したと考えてよいかも知れない。

以上、これまで試行錯誤してきた軌跡を見ていただいた。全く別の視点からの解決策があるような気もする。                                              髭じいさん

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