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カイチ

近頃、地名の話が多い気がする。身近にあればそそられるかもしれないが、そうでもなければ関心が起らないかも知れない。楽しんでいただければ幸甚である。本貫地に近い神戸に「新開地」という歓楽街がある。昔なら映画館やら劇場のみならずスケート場などもあった。が、今どうなっているのか知らない。

カイト、カイツ、カイチを同義の地名と解する場合がある。だが同一地域に存在するので、方言による音変化と見ることは難しい。郡上ではカイト、カイツが多く、カイチはそれ程でもない。それでも旧地名まで遡って行けばそれなりに発見できる。

私は「垣外(カキソト)-カキト-カイト」、「垣内(カキウチ)-カキツ-カイツ」を想定してきた(『カイトの語源』/2021年3月22日)。今回は「カイチ」について考えてみようという趣向である。これについても「垣」を重視すれば、「垣地(カキチ)」から「カイチ」で問題なさそうにみえるが、やっぱり腑に落ちない。

前回は「部曲(かきべ、ブキョク)」を取り上げて「曲(かき)」を「部(べ)」の下部にあたる職と考え、漢語をそのまま用いて表したと解した。「開戸」「開土」も同じである。「カイチ」についても同様に漢語を基にしていると考えられないか。と言っても「チ」を表す漢字は多い。

そこで特定する方法の一つとして、「カイト-ヤト」「カイツ-ヤツ」が対応しているとすれば、また「カイチ」と「ヤチ」が対応しそうな点を重視してみよう。民俗学では「ヤト」「ヤツ」「ヤチ」が同義で区別がないと解することがある。ところが実際には「ヤト」「ヤツ」と「ヤチ」は地形地名としてやや異なっている。「ヤト」「ヤツ」が谷筋を遡り、水利がよく日当たりのよい河岸段丘のイメージであるのに対し、「ヤチ」は湿地や池を連想できる。

そこで私は「カイチ」を「開地」ないし「開池」と解してみた。「地」「池」は漢語に遡ってもほぼ同音。湿地にある程度勾配をつけて溝を掘り、水を流してしまえば耕地になるし、流した水を溜めれば池となる。記紀で池を造る記事が多い。「次印色入日子命者 作血沼池 又作狹山池 又作日下之高津池」(垂仁記)、「亦作劒池 爲役之堤池而作百濟池」(應神記)など。大規模な土木工事は難しいとしても、あちこちで水路をつくり耕地を造成したことは間違いあるまい。以上私は「ヤチ」が「ヤト」「ヤツ」とやや系統が異なることから、「カイチ」の語源を「開地」ないし「開池」と解したいのである。                                              髭じいさん

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