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鹿倉(かくら)の語源

郡上市和良の地名である。以前この場で語源を少し考えてみたことがある。日付が2017年7月3日となっていて、読み返してみるとその時の気分が蘇ってきた。定説になりかけている「狩り倉」だけでなく、「河(かは)倉」も考えられるではないかと考察した。これらを今の視点で考え直してみようという試みで、今回はサイエンスと言ってよいかも知れない。論点は三つ。

1 音の省略

「狩り倉」の場合、「かりくら」の「り」が省略される。これは和語でしばしば見れらる用法で、「作田(つくりだ)」が「佃(つくだ)」「渡瀬(わたりせ)」が「わたせ」などに用例がある。

「河(かは)倉」の場合、「かはくら」の「は」が省略される。「野原(のはら)」が「野良(のら)」、「河原(かははら)」が「かはら」、「河隈(かはくま)」が「かくま」などに用例がある。

どちらも代表的な例を記しただけで、他にも用例が見られるのでこれらの省略は事実とみてよく、この点ではどちらが優れているとかは判定できない。

2 「鹿倉」の「鹿」という用字について

「狩り倉」であるから、「鹿」を狩る対象として意味を付与している可能性がある。この点は「鹿」が万葉仮名に見られないので一理ある。しかし他では「かくら」のように仮名表記なっている例があり、これで統一できる見解にはならない。この辺りで「狩り」の「か」に「鹿」を当てている例を思いつかないのも不安である。

この点「河(かは)倉」では、「川上(かおれ)」が「鹿折」、「河隈(かくま)」が「鹿熊」と表記されることがある。鹿が意味を表しているとは限らないわけだ。

3 「狩野(かのう)」の場合

「狩り-倉」として「狩り」から「り」が省略されて「か」になる例として、「狩り野」が「狩野(かのう)」となるのを挙げたい。だが、これには「う」が付加されており、安定して「かの」となっていないわけで、ちょっと心配である。これでは実際に「狩り」から「鹿」への変化がたどり難いかもしれない。

これに対し、「河(かは)」から「か」へは郡上においても「河辺(かはべ)」が「かべ」となるなど豊富な用例がある。「川沼(かはぬま)」から「かぬま」へ、更に「鹿沼」と表記されるなどもこれの例証とみてよさそうだ。

以上から、どちらが適切かとまでは言えないとしても、「河倉(かはくら)」を語源の候補に挙げることができると思う。だが実際には、それぞれの地名を実地に踏査して確認することが必要であることは論をまたない。                                               髭じいさん

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