漂流

 8月27日の朝刊で、去る7月24日行方不明となった長崎県漁協所属の武智船長が、無事救助された事を報じた。発見場所は犬吠埼の東800kmの地点で、実に34日間約2000kmの漂流の末であった。このような長期漂流で生還した記録を、筆者のスクラップブックで探したら、1994年2月グアム沖で沈没した沖縄の漁船の乗組員9人が、37日間約2800kmを救命ボートで漂流して、フィリピンのミンダナオ島付近で全員(!)救助された記事を見つけた。これもすごい事である。こうした生還物語に感動して、学生時代に読んだ「実験漂流記」を思い出し、読み直した。1952年、アラン・ボンバールというフランスの若き医者が、海難者のために自ら実験漂流を試みた記録である。水も食料も持たず(非常食には最後まで手を付けなかった)簡単な釣道具とナイフなどをゴムボートに積んで、アフリカ西岸のカナリア諸島から南米バルバドス島まで、65日かかって大西洋を横断した。この間、計算した量の海水を飲み、魚とプランクトンで飢えをしのいだのである。

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