「夏の終わりに」

 夏のお仕事が一区切りついたので、バリ島に行って来ました。前日僕は38度の熱を出したのですが、遊びのためなら熱も下げましょう。出発の日はぴかぴかの元気になっておりました。夕方の飛行機でデンパサールに着いたのは12時近く。ウブドゥのホテルに連れて行ってもらって、この日は寝るだけで終わってしまいました。
6年ぶりで訪れたバリは、ずいぶん様子が変わっておりました。道の幅が広くなっているし、圧倒的に車が増えていました。日本ではあまり見かけないタイプのトヨタの四駆が我が物顔で街を駆け抜けていました。しかし、人々は相変わらずでありました。三つ編みやら木彫りの人形やらを売りつける人たち、やたら、何処へ行くのか訪ねてくるタクシーの運ちゃん、うっとうしいくらいな生きるための攻防が何とも懐かしく健在でありました。そしてこれでもかとばかり日常を楽しむための工夫のいろいろ。お盆の飾り付けや、水盆に花びらで描かれた絵や、田んぼの真ん中の東屋なんかに、かの地の人の余裕のある生き様を見せつけてくれます。心底うらやましく思います。
僕はここでは異邦の人であります。どんなにやさしくされてもそれは「観光客」の装束に守られているからです。法外な料金をふっかけるタクシーの兄ちゃんもアンケートと称して詐欺まがいをはたらく兄ちゃんも夜になると、敬虔なヒンズー教徒に変身してガムランを演奏したりします。その辺の神秘には僕たちはどうしても立ち入ることが出来ません。出来ないからこそのあこがれであるかもしれません。このあこがれが色あせない限り僕はまたこの島を訪れることになるのだろうな、とビンタンビールの淡い酔いの中で僕は思っておりました。

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