孫と二人旅

この正月に孫と故郷へ帰ることができた。彼も中学生になって部活や勉強などで忙しいし、別所帯で暮らしていることもあり、私と行動を共にすることが稀になっている。
長期休暇にしても部活があるというし、何だかんだ言っても学校へ行くことが多いようだ。例え暇ができても、自我の芽生えもあろうし、友人と遊ぶほうが面白かろう。
年寄りと長旅に出るなどほとんど期待できないだろうに、どういう風の吹き回しか一緒に行くという。どうして行く気になったのかは尋ねない。
もうこういう機会はあるまいと思い、連れていくことにした。日程に余裕がなく弾丸の予定になったが、行き返りの道中が楽しみである。
バスで八幡から岐阜まで出て、東海道線を乗り継ぎ明石までの往復コース。通いなれた経路なので何の心配もない。予想以上に順調で、米原で新快速に乗り変えて明石まで余裕の道中だった。しかも明石駅へ迎えに来てもらっていたので、殆ど何のストレスもなかった。
順調すぎて、昼食をコンビニで買ったサンドイッチで済まさざるを得なかったのが少しばかり心残りだったくらい。
例によって実兄の家で正月のご馳走を頂き、暖かい布団で寝る。深酒をすることもなくなっているので、朝の目覚めも中々よろしい。彼はお年玉をもらいご機嫌の様子。私は気になることをそれなりに見届け、帰り支度も早々にして帰路に就く。
また明石まで送ってもらい、一緒に昼食をとろうとしたあたりから徐々に齟齬が始まる。結構人気のある店だったようで、満席のため時間待ちする必要があるという。帰りの道中が気になって待つ気にならない。昼食分のパンぐらいは持っていたので、そのまま駅へ直行する。
明石駅ではそれほど時間待ちもせず米原行きに乗れたが、満員で座れない。普通だと三宮駅で座れるのに大阪まで立つしかなかった。大阪駅で座席を確保できたものの、網棚に上げていたバッグを移動中、席に座る人がいる。事情を説明して譲ってもらうも喜んでという様子でないし、私の気分もあまり宜しくない。
米原で乗り換える時に、私は気づかなかったが、孫が人に押されて倒れたという。
岐阜に着きやれやれという気分で改札を出ようとすると、彼が切符を落としたと言う。どうやら米原でこけたのが原因らしい。バスの時間も迫っていたので、仕方なく清算して駅を出た。
岐阜駅前の高架になっている歩道で降りる場所を一つ間違え、行き止まり。バス道を強行突破しようとすると彼にたしなめられ、高架に戻り、やっとこさ八幡行きのバスに間に合うといった具合。でもまあ無事に帰ってきたわけだから、これはこれで良しとするか。

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