印雀(インジャク)

自分の能力では歯のたたない物や事があるものだ。一芸に秀でた者でも、神でない身、その他の分野ではさほどでないこともある。まして無芸大食の私としては、全ての分野で一寸先は闇という状況だ。ことさら言うまでもないのに、つらつらこんなことを書いたのは、何十年に経っても糸口すら掴めない地名が山積しているからだ。

印雀は郡上八幡の小駄良筋にある地名で、初音(はつね)地区にある。まず印雀という文字が印象に残ったし、意味については字面が似ている孔雀に関係あるのかなという程度だった。繰り返し考えるにつれ基本情報が少しづつ集まってきたが、地名を解く糸口は見つからなかった。それでもまあ、これらを整理してみると、

1 孔雀ではなさそうだが、とりあえず印雀(インジャク)は音読み地名であること。

2 印雀からは中切(なかぎり)を経由して小駄良川を下り八幡へ行くルートと共に、小駄良川支流の印雀川を遡り、八ツ平(ハッペイ)を経由して峠を越え、吉田川河畔の石原、初納(ショノウ)、立光(リュウコウ)へ下るルートにもなっている。

3 中切(なかぎり)地区にも「大日(ダイニチ)」「堂前(ドウまえ)」などの音読みする小字がある。

これらから、私は印雀(インジャク)が仏教に関連する地名ではないかと考えてみた。かくして少しばかり文献を漁ってみた。ただし、隅から隅まで調べた訳ではない。

私の能力では、「印雀」を「印-雀」と区切って、「印」が十指を使って種々の形をつくる印相などと解釈できても、「雀」が見当もつかない。

長年、ぐるぐるこんなことをループしていた。この間友人と話していると、彼が岐阜県羽島郡岐南町にある「印食(インジキ)」に関連するのではないかと提案してくれた。

印食(インジキ)、印雀(インジャク)と並べて見ると、確かに音変化の範囲内にある気がする。とは言え印食(インジキ)の語源も又不明となっており、なかなか手がかりが掴めない。

そこで印食(インジキ)村の歴史を簡単に振り返ってみると、こちらと関連するテーマがあった。八百比丘尼であり、向こうでも結構古い伝承らしい。彼女は人魚の肉を食べて八百年も生きたことになっている。「食(ジキ)」は人魚の肉を食べたことを指しているかもしれない。これなら小駄良筋にもやはり八百比丘尼の伝承が残されている。また比丘尼だから、仏教に関連しよう。私は八百比丘尼の起源は越前にあると推測しており、仏教の伝播に従ってこの話も伝わったのではあるまいか。

これならば、長滝の修行僧やらが戒仏(カイブツ)から印雀(インジャク)を経由し、八ツ平(ハッペイ)から立光(リュウコウ)辺りまで音読み地名を歩いたことにならないか。

単なる思い付きのように感じられるかもしれないが、長年地元で考え続けていればそれなりの仮説が生れるということだ。立光(リュウコウ)より先の話は又の機会に。                                               髭じいさん

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