東坊(とうぼ)

人の一生は長いようで短いし、短いようで長い。だがどちらも行き着く先は同じで、この地では火葬され、小さな骨壺に入れられる。近頃では骨壺を納める場について、散骨を含め、幾つか選択肢がある。昔なら、行き倒れで身元不明の者はいざ知らず、殆んどの人が本貫地の墓に納められた。最後の行き場が墓地だったわけだ。

前回は「藤内(トウナイ)」を取り上げ、「藤(トウ)」を「塔」とみて、墓地に関連するのではないかという仮説を立ててみた。私は「東坊(とうぼ)」の「東(トウ)」もまた、現状、「塔」を原形にすると解している。今回はこれを取り上げてみよう。まずはこの辺りにある関連しそうな小字地名をあげておく。

1 「東坊(とうぼ)」 郡上八幡町那比

2 「東坊(とうぼ)」 高山市上野町

3 「トウボ」 郡上美並三戸

4 「東棒(とうぼう)」 郡上相生荒倉

5 「東方(とうぼう)」 益田郡金山町沓部

6 「東方(ひがしかた)」 郡上八幡町小那比

以上である。用例が少ないのは、徐々に土葬が少なくなってきた背景があるのかもしれない。

表題とした「東坊」は郡上八幡那比にある小字である。「とうぼう」ではなく「とうぼ」と読む。だが旧益田郡金山町にある「東方」、相生荒倉の「東棒」は「とうぼう」であって、一筋縄ではいかない。

地名においては「う」が消えたり、付け加えられたりする。「山後」が「やまうしろ」から「やましろ」、「麻布」が「あさふ」から「あそう」という具合である。この場合、私は「トウボ」に「ウ」が付け加えられたと解釈している。

上で列挙した例では、美並三戸のカタカナ表記である「トウボ」がもっとも原形に近いのではあるまいか。伝承が薄れ、受け継がれてきた意味を確定できなくなり、カタカナで表記せざるを得なくなった。

これを除けば、凡て漢語の「東」が使われており、これを偶然とは言えまい。残念ながらはっきりした根拠を示せないけれども、これは「東北」が鬼門なので、忌みが関連するかも知れないとうすうす感じている。

八幡町小那比の「ひがしかた」は、「島方(しまかた)」「明方(みょうがた)」「那比方(なびかた)」などの用例からすれば、あり得る呼び方だろう。

地名である以上、伝承された呼び方を本にせざるを得ない。が、「島方」「明方」「那比方」の例では「島」「明」「那比」というはっきりした対象のある方向を指している。「ひがしかた」では「東」といふ方向を指すのみなので一抹の不安がある。

以上、「東方」もまた「トウボ」だったと考えられないか。いずれも「塔墓」とみたい。                                              髭じいさん

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