ソブ谷

郡上で年配の人なら、「ソブ」が川垢、水垢のことだと分かるようだ。ソブを食む鮎は内臓が泥臭い。大水が出てソブを洗い流した後に生える綺麗なこけを食む鮎は香りがよい。このような鮎の内臓を塩漬けにしたものが「鮎うるか」と言われるもので、こちらでも珍味とされる。

川垢のみならず、更に鉄分が赤さびているのを「赤そぶ」とよぶ事もあるらしい。郡上でも使われる用語だが、地名ではそれとして殆んど見かけない。用例を探っていくと、奥飛騨や東農で見られる。かつては美濃、飛騨地区にまたがる用語だったようにみえる。

又「祖父(ソフ)」が古くは「ソブ」と呼ばれることがあるし、急に気温が低下させ農作物に被害をもたらす冷たい露を表すことがあるらしいので容易でない。

旧荘川村牛丸に「ソフ谷」があって、「祖父谷」とも解釈できる余地がある。この辺りで冷たい露という語は耳にしなくて、「早霜」「遅霜」など「霜」の用例が多いように見える。ただし、各用例を厳密に解析した上でないと迂闊に捨て去ることはできない。

というような前提で、目についた用例を見ていただく。

1 「ソブ谷」(白川村荻町)

2 「ソブ谷」(旧上宝村蔵柱)

3 「ヲソブ」(旧上宝村福地)

4 「赤そぶ」(旧丹生川村旗鉾)

5 「操川 ソブカワ」(土岐市肥田町肥田)

6 「ソフ谷」(旧荘川村牛丸)

3の「ヲソブ」、4の「赤そぶ」を除けば、いずれも「谷」「川」を形容する形になっているので水に関連しそうだ。この点、6の「ソフ谷」も同じように解釈できる余地がある。旧仮名遣いでは濁音を使わないし、この辺りの地名で「祖父」を冠するものが見当たらないので、これもまた「ソブ谷」の例と見られるのではなかろうか。

因みに「ヲソブ」は「小ソブ」とみることができよう。ただ、「赤そぶ」については実際に踏査できていないので、「赤いソブ」のついた川や池などを連想するのみである。

この辺りでは「赤谷(あかだに)」という用例は多い。これは大水の時に赤土が大量に流れ出る印象が強く、谷自体が赤いということはない。赤土は酸化した鉄分に関連するかもしれない。鉄に関して言うと、黒谷と呼ばれることもあり簡単ではない。郡上の例では、黑い砂鉄が所々で川底に堆積している場合がある。

地名ではないが、皮膚病に感染している鮎を「そぼ」が入っているという事があるらしい。「そぶ」と関連しそうな気もする。

このように小字の解析には類似する用例を集めること、方言研究をしっかりやることが必要だと示せたのではないか。                                               髭じいさん

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