大きくなったら何になる?

子ども達にとって、現代は確かにワクワクしたくてもなかなかその糸口が掴めない情況に置かれているように思える。なぜなら、お手本となるべき近くに居る大人たちがあまりワクワクしていないからである。10数年続いている不況が大人たち自身の進むべき方向を失わせていることが大きな要因であろうし、この不況の原因は戦後復興を成し遂げ、世界第二位の経済力を造り上げた「豊かさ」に対する喪失感かも知れない。こうした閉塞的な中でこれを乗り越えるための一つの試みとして、村上龍の「13歳のハローワーク」がある。2600円もするのに現在100万部以上を売り上げている。内容は500種以上の職業を中学生や高校生に向けて紹介している。出版元に届いた中学生たちの感想は、「まわりの大人たちや先生から知らされなかった仕事の世界が見えてきた」「早く仕事をしたくなった。」などと積極的なものであった。この本によって生きていくことの具体的なイメージを持つことができたのであろう。ほとんどの中学生たちは人生を肯定しより積極的に生きることを求めている。そうした彼らに、空虚な叱咤激励や、甘い理想を説くことよりも歴史や現実を正しく伝えることが大切であることを示しているように思える。

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