ギフチョウ
前回フィールドワークの予定について触れた。今回はさっそくレポートである。この種の文章は時間をおくことにしているが、何かしら気が急くのでそのまま書くことにする。
やはり阿瀬尾からの取り付きで苦労した。尾根道は最初に高度を稼ぐことが多いからしんどいことは予想していたが、体力が落ちているからだろう、予想以上につらかった。いくら修験道とは言え、尾根に取りつくルートが他にもあるような気がした。これが「鬼が坂」らしい。二つの意見が出た。
1 鬼なら平気で登れるが、人にはえらい坂だから「鬼が坂」と呼ぶ。
2 実際に修験者ないし鬼と呼ばれる「まつろわぬ」人たちが使ったから。
その後少し緩傾斜になるものの、再び急坂になる。高度差100メートルほど登ると、楽な尾根道に出た。
「鬼が踏んだ」はこの緩傾斜を指すのか、急坂なのか、はたまた尾根道の入り口なのか。これには脳裏に異論が浮かんだ。
尾根道を行くと間もなく「賽の河原」に着く。何となく白っぽい石が散らばっている。石灰質だからか、小さなカルスト地形のようにも感じた。修験者もここで石を積んだのだろうか、子を失った親が天空への道標を建てたのだろうか。
この辺りはアップダウンが緩く楽なコースだが、西側がひどく抉れたところに「貝掛け」がある。意見は三つ。
1 修験者がほら貝を懸けたから。
2 抉れた地形が二枚貝のように見えるから「貝欠け」である。
3 「あゆ」が「あゐ」「あい」になることがあるから、「かゆ」が「かゐ」「かい」になった。
確かこの辺りだったか、何羽かの蝶を見た。中にやや小ぶりで羽が黄色と黒の縞になった二羽のギフチョウに遭遇した。それとして観たのは初めてである。尾根道で水が見当たらないし、二羽だったから、繁殖に関連するかもしれないとの由。
昼食は結構な広さのある「だいら」で摂った。「天狗鳥」とよばれる地点である。残念ながら尾根まで杉が植林され、殆ど間伐されていない状態だったので、見晴らしがきかない。手作りの弁当が誠にうまかった。「天狗鳥」に関する意見は二つ。
1 「天狗踊り」から「天狗鳥」になった。瘤取りの伝承が天狗の踊りに関連するため。
2 伝説の鷲や烏など、大型の鳥が営巣していた。
昼食後は「ウバドウヤシキ」へ行くのみ。だが密植した背の高い杉で見晴らしが悪く、かつてあった道標も見つからない。やや広いところに出て、これかと推測したのみ。本宮への道らしきものも偵察したが、結論が出ない。正面に見えるはずの高賀山もまったく視界に入らない。残念ながら、下山。要約すれば、達成できなかったテーマと遭遇か。