初孫
先月、友人に初孫が生まれた。この地では最も古い知人である。近ごろ顔を合わせることが減ってきたし、例え会うとしても慌ただしいことが多い。彼は誠実な人柄なので、地元の役職を次々歴任し、今では欠かせない人物になっているようである。
初孫と言うことで、こちらにいる仲間に誘ってもらい一緒に赤ん坊を見に行くことになった。当日の朝突然決まったので何の用意もできず、心身とも日常のままだ。
とは言え、電話を切った直後から、私は旅行気分になっている。近ごろ遠出することがほとんどない。ちょっとしたことでも喜んでいられる。通夜や葬式へ行くとなるとこうはいかない。
その時に同乗した仲間は皆すでに爺さん、婆さんになっており、落ち着いたものだ。彼らは車を駆使して行動範囲が広い。この程度の距離は日常の範囲になるらしい。
あいにく雨模様だったが、これもまたよしである。見慣れた山川も、楽しい気分でみれば別物に見える。
それほどの雨ではなかったのだろう。この時は和良川も馬瀬川もそれほど濁っていなかった。
近くに住んでいても落ち着いて話ができる機会はそうはない。近ごろ会わない人もいたので、車内でも会話がはずむ。道中ワイワイガヤガヤ、かまびすしい。
それぞれ近況を話す。退職した人は親の介護のことやら家事のこと。まじかに退職を控えている人は、年金生活への期待と不安。ただこんな時には憂鬱な話は続かない。近ごろ始めた碁のことやら、筋力トレーニングのためのテニス、畑の作業のことなどへどんどん移る。やはり、目出度いことは心を軽くするのだろう。
到着すると、赤ん坊が寝かけているということで、ちょっとした時間待ち。赤ん坊のことを考えて、ひそひそ話すのも何となく心楽しい。
ぐっすり寝たということで、いよいよ赤ん坊の登場である。ちょっと大柄な、見るからに健康な様子。爺さんになったばかりの友人は嬉しそうだ。相当心配したのだろう。母子とも順調な様子で安心している様子、これ以上のことはない。
ただ、赤ん坊を抱くのが怖いという。頭がグニャグニャするのでおっかないそうだ。爺としては先輩になるので一言もの申したいが、時間が経てば解決するので、あれこれ言うこともない。
我々は団塊の世代と言ってよい。幸運にも、私の周りでは続々孫が生まれている状況である。晩婚化が定着したので、ちょっとばかり遅めかもしれない。
過疎の郡部に住む若者にとって嫁や婿を迎えるのは容易でない。田舎は不便な印象があるからだろう。ただ、浮世は車社会だ。ここら辺りでも道路網が整備されており、学校や病院などもそれほど不自由はないですよ。