あずき蛇

この世は知らないことばかり。この歳になっても知らないことばかり多く、もはや言い訳できない。

先週、遠方の友人が来幡された。私は友人と考えているものの、彼がそう思っているかどうか知らない。二十代からだからまあ年月だけはたっている。もともと郡上の人なので帰郷と言ってよさそうだが、墓も含め引っ越しされており何と言うべきか。彼が郡上を去り、同伴した他の二人もまた八幡の街中出身で、近場ながら今は外へ出ている。よそ者の私がその街中に住んでいるのだから夢のようだ。彼は旧家の出身ということか郡上であちこち不動産を所有されており、終活ということで、整理を目指してこられたようである。ここのところ数年に一度お会いできるぐらいなので、これを機に出かけることにした。

私がこちらへ来始めたころ、金も無いので彼の山小屋をお借りしたのものだ。小屋に泊まった夜、空を見上げて驚いた。ものすごい数の星が見える。朝には南東に開けた眺望がまた素晴らしい。

これまで小屋の近くまで行くことがあっても、たどり着けなかった。いつかまた訪れたいと考えていたので彼がこちらへ来るのを機に、ご一緒させてもらうことにした。その日は朝から快晴で風もなく暖かな日だった。小駄良筋から西洞へ入り、いろいろ懐かしい景色を堪能した。

彼が地元の人と話している間、農道をぶらぶらしていると模様の美しい蛇が出てきた。全体として小豆色と言ってよかろう、細かい格子模様である。長さは四五十センチぐらいでまだ子供なのかなと感じていたが、痩せていただけかも知れない。急には蛇の種名が思い浮ばなかった。

一人でしげしげ見ていると友人が近付いて来て、すぐさま「あずき蛇やな」と言う。ここらあたりでヤマカガシを「あずき蛇」と呼ぶらしい。私の中でヤマカガシは黒っぽい模様で腹の辺りが黄色いイメージがあるので思い浮かばなかった。実際に見てから自信満々に言うので、間違いないのだろう。彼の説では子供ではなく、このぐらいの大きさなのだそうだ。だが、大きさにしても模様にしても印象が違いすぎる。ヤマカガシは地方によって色や模様がかなり違うそうなので早まった結論を出すわけにはいかない。ネットを検索してみると確かにヤマカガシは別名「あずき蛇」と呼ばれるらしいので、個体差が大きいのかも知れない。

数年前、八幡小学校でヤマカガシが出たという話があった。性格は大人しいので余程のことがない限り咬まれることはないそうだが、毒性はマムシよりきついらしい。近頃は殺生を好まなくなったので、蛇を見ても大人しく見ているだけになった。万一かまっていれば、どうかして毒が目に入ると相当やばかったらしい。あまりに綺麗だったので蛇の話になってしまった。                                               髭じいさん

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