ウトフ

西和良に「ウトフ」という小字がある。なかなか糸口すら見つからない難解地名だ。カタカナで表記されているのは、もう地元の人もその由來がはっきりとは分からないという事だろう。私とて同じだが、長年取り組んでいると何となくヒントのようなものが浮かぶこともある。

現代では「フ」で終わる語は、漢語を除けば、それ程多い訳ではない。「言ふ」「行(おこな)ふ」が現代仮名で「言う」「行う」となるなど、殆んど変化してしまうからだ。従って「ウトフ」は古語に遡る可能性が高い。ここまではたどり着いても、さてどうしたものか。

古語としての「フ」なら、「麻生(アサフ)」「菅生(スガフ)」など「植物名+生」の例がかなりある。「麻生(アサフ)」なら「アソウ」となり、更に「フ」「ウ」も無くなって「アソ」となる要領である。

この形は地名としても広く使われるので、「ウト-フ」と考えてみた。旧仮名遣いでは濁音が清音として書かれるので、「ウト」は実際の発音が「ウド」だったと解せよう。そして「ウド」は「独活(うど)」が考えられる。

「フ」は「生」で、「相生(あひ-おひ)」等からも分かるように、「おふ」という動詞の省略形だろう。とすれば「ウトフ」は「ウト-フ」で「ウドが生えている」という意味になり、この辺りではそれほど不自然ではない。

今の感覚からすればウドが地名に使われる植物だというのはちょっと強引な気もするけれども、かつては重要な野菜だったのだろう。私は、これを冷水にさらし、酢味噌で食べるのが好みである。

私はこれまで「和良」の語源として「わらひ-ふ」を考えてきた。「九頭の宮」が越前と関連するだろうという点を一つの根拠とした。私の中では反例が見つかっていないので、相変わらずの仮説である。明宝の気良に「蕨野(わらびの)」という小字があり、郡上においても地名に「わらび」がつくのはあり得ない事でない。

忙しい人に私が書いたものを探せと言うのも変だが、2023年11月6日づけの「和良」を見ていただくと凡そのことが分かると思う。ちょっとばかりサーフィンするのも楽しいかもしれない。

とすれば、「わらび」という郷に「うど」という小字があることになって、一気に田舎の風景が浮かぶではないか。蕨ならやっと雪が融けて早春の気配を感じるものだし、ウドなら初夏の心地よいぬくもりを思い起こす。

それと共に地名としての古さを思えば、千年以上の時間を一気に遡れる気分になれるのもよい。                                               髭じいさん

前の記事

カメムシ騒動

次の記事

二十年目