ソリ

このところ、頭に毛が無いだとかハゲだとか書いてきた。自分の頭を気にして書いたわけではないが、潜在的な意識が外に出てきたように感じて面白い。偶然とはいえ、今回も頭の一部に関連しそうで不思議な気分だ。

郡上八幡小那比に「曽利(ソリ)」という小字がある。先輩から由來やらを聞いていたので、なんとなく焼き畑に関連するとは考えてきたが、その根拠がはっきりしない。語源からすると、今のところ

1 ひげ剃りの「剃り」

2 反り返るの「反り」

の二通りが考えられる。1の「剃り」については、何となく草や木を伐採してきれいにすることかなという印象があった。焼き畑は又「薙ぎ(ナギ)畑」と呼ばれ、これが草木をなぎ倒すことからきているとすれば、それほど無理もなさそうだ。旧吉城郡宮川村などに「ヒゲスリ」という小字がある。恐らく「ソリ」「スリ」は同系の語で、語源が明らかでなくなって音変化したのかも知れない。根拠としては薄いがこれもありうる。

「反り返る」の方は、伐採した草木を焼いて綺麗にして四、五年畑作した後、地力が落ちてしまうので場所を変えるしかない。放置された畑は段々荒れ、木が繁茂し始めてもとの状態に還っていく。これを「反り返る」とするわけだ。「ソリ」が一般に休耕中の焼き畑地とされることにも符合する。

どちらも捨てがたいとしても、近頃私は「反り返る」に傾いている。「ソリ」地名は郡上にもあるが、飛騨地区に多い。旧大野郡丹生川村小野に「ソリ畑」、同久手に「曽里美(ソリミ)」「ソリ倦(マキ)」、同郡清見村生小島に「ソリ橋」、旧恵那郡付知町、旧吉城郡宮川村牧戸に「曽利免(ソリメ)」などが残っている。

後者であれば、「ソリ」が焼き畑の循環を示すことになる。火入れから一年目は「アラク」「アラキ」「アラチ」「キリハタ」等と呼ぶ。岐阜県では地力が落ちはじめる時期を「クナ」呼んだらしく、郡上では和良三庫(みくら)にクナガ洞などがあり、使い始めて二年、三年目ないし四年目あたりまでを指すようだ。

山間地であるこの地において焼き畑は重要な農耕だったはずであり、残存地名からそのあり方を掘り下げてみたいと思う。                                               髭じいさん

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