神田

今回は仮名を振らずに題名を書いてみる。上京する機会は殆どなかったが、たまに行けば必ず古本を探しに神田(かんだ)へ行った。高価な本は無理としても、滅多に行けないので、あれこれ物色するのが楽しみであった。美濃地区にも関市黒屋に神田洞(かんだぼら)があり、岐阜県全体まで広げれば他にも用例がありそうだ。

この場合、神田は「かみ-た」が原形だろう。これが音便化して「かんだ」へ変化したものと思われる。とすれば「神」が「かみ」なので訓読みということになる。

ところが、岐阜県で「神田」は「かんだ」と呼ばれるのはごく稀で、「ジンデン」と音読みされることが多い。「ジンデン」は更に「ジンデ」となり、「ン」が消えるケースが結構ある。これは「ジンデン」という呼び方があまねく広がっていることが前提にあろう。

それでは何故「ジンデン」と音読みされるか。難問である。

まず音を確かめると、「神」は示偏で「申」が音符なので「シン」と読まれるのが自然なのに、「ジン」と有声音になっている点に多少違和感がある。

この点についてまずは「新田」と比べてみよう。訓読みなら「起こし田(おこしだ)」「新田(にいだ-につた)」「新田(あらた)」などがある。

「新田」は「シンデン」と片仮名表記する小字があって由来がはっきりしないことがあるし、「神田」を濁らず「シンデン」と呼ぶ場合があるので、言い切ることは難しいとしても、県内ではまず殆んど「シンデン」と読まれていると言ってよかろう。

「神田」が広く「ジンデン」と呼ばれるのは、この「新田」と区別しやすくしている意味があるのではないか。「新田」も同じく「シンデン」から「シンデ」と省略されることがある。

「田」を「デン」と音読みする用例を振り返ってみると、

1 高山市滝町に「ほうし田(デン)」とあるのは「法師田」、高山市岩井町の「どうでん」は「堂田」、旧明方村大谷の「佛田(ブツデン)」、八幡町穀見の「久傳(クデン)」は「供田」とすればやはり仏教に関連しそうな例である。

2 「神田(ジンデン)」の他、「齋田(サイデン)」などの用例からすれば神社に奉納した田のような例もある。

3 このほか、高山市漆垣内(うるしがいと)町の「あがた田(デン)」、同江名子町の「上使田(ジョウシデン)」など公用の田と思われる例もある。

1,2は寺や神社へ奉納された例とみることができようし、3は国衙や郡衙など公用に使われた田圃とも解せる。これらはいずれも自家用ではなく特別の用途を持つ田と考えられ、これら公用するものを「デン」と呼んでいるのではあるまいか。

八幡町那比に「観音田(カンノンだ)」のような例もあるので、すぐに抽象してしまうのも愚かなことだが、緩く見て頂ければ幸いである。                                            髭じいさん

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