誕生日と免許の更新

 誕生日に運転免許の更新に出掛けた。以前は三軒茶屋くんだりまで出掛けなければならなかったのが今度は最寄りの警察署で済ませられることになった。すこしはありがたいけれど、それでも苦労して手に入れたライセンスのなんでまた更新などという面倒なことをしなければならないのだ、という何度目かの理不尽な思いは無くならない。
 免許に関わる施設には独特の人を不愉快な気持ちにさせる空気、というのが確かにある。最悪なのが教習所で、十数年前の悪夢のような日々が蘇る。「お上のご好意でお前などに運転免許をとらせてやろうってんだから、ちょっとでもたてついたらただじゃおかないからな。」と、当時の年輩の教官は口にこそ出さないけれどそう意味の表情を満面にたたえていた。満面にたたえるのは普通「笑み」なのに。
 あいかわらずの独特の空気の中で、言われるままに視力検査をして2995円の印紙を購入し、訳のワカランVTRを見せられて、晴れて僕の免許は更新された。はあ、やれやれ。それにしても持ってこいと言うから駅にある4枚600円のスピード写真をわざわざ撮って持っていったのに必要なかったぞ。こういうところちゃんとして無駄な出費をさせないでもらいたいものだ。2995円の手数料というのもよくわからないしな。なんかこういちいち気に障る更新手続きの顛末であった。フランスの友人に免許を見せてもらったことがある。そこに写っていたのは十代後半のみずみずしいワカモノで、目の前にいるもっさりしたオッサンとは似てもにつかなかった。「これがあんたか?」と聞くと、「そうだおれもまんざらでもなかろう。」というふうに微笑むのである。大人の国では更新なんてものは必要ないらしいのだ。
 その足で酒屋さんに向かい、滅多に買わないシャンパンなどを購入し、夜のお誕生会に備えるのだった。たまに免許の更新とかいう面倒なものがついてくるけど、やっぱりわくわくする。誕生日は僕の大好物のひとつだ。

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