自己責任ってなに?

 イラクで人質になっていた五人の日本人が解放されて、こんなに喜ばしいことはないのに、どんよりとこの重い気分はナニゴトでしょう。解放されて日本に近づくにつれ、口を閉ざし、どんどん表情を無くしていく彼らの姿はむしろ人質に取られていたときよりも痛々しくはないでしょうか。早々に自衛隊撤退を選択肢からはずしたときもこの国のリーダー達に失望しましたが、解放後の彼らの発言はそれを上回って、むなしさを覚えます。イラクのために活動を続けたいと言った人に「さんざん迷惑かけて、お金もいっぱい使わせてまだそういうことを言うのか?」と声を荒げた総理大臣、救出に要した費用を被害者と家族に請求することを思いついた与党の幹部、今回の事件を雪山の遭難にたとえてみせた政治家、哀しいけれどこの国を動かす人たちです。
 そんな発言が幅を利かせるようになると、報道のトーンが微妙に変化していくのはどうしてでしょう。被害者家族にあれだけ同情的だったマスコミがいつの間にか「自己責任」を振りかざし始めています。自衛隊の撤退に反対、が世論の75パーセントを超えたというニュースを聞いたときには、思わず「うそだろ?」と声が出ました。何だろう、このあからさまな軌道修正は。喜ばしいはずの人質解放のニュースがどんどん後味の悪いものに変わっていきます。この不気味な風潮からは目を逸らさずに気を付けていた方が良さそうです。

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2004年、初虫採り。