『説文解字』入門(7)-未末-
恥ずかしながら、私がよく間違える字を紹介しよう。別に難しい文字というわけではなく、力不足ないし不注意によって間違えるようなものである。
「未」「末」は字形が似ていると言っても、上が長いか下が長いかで判断できるので、その判別が難しいというのは言い訳に近い。
ところが、つい最近でもこれを間違えた。字形のみならず、音義ともに異なるのであるから、ボケが始っていると思いきや、どうも若いときから苦手にしていたようだ。江戸時代の寺小屋でも、よく間違えていたらしい。
「末」は何かの折に『説文』の説を紹介したと思うので簡単に言うと、「木」と「上」の会意字であった。現在では、指事とみることもある。
これに対し「未」は、十二支で「ひつじ」として使われ、漢文では「未だ-ず」として再読文字とされる。
「未」は『説文』十四篇下181にあり、「未 味也 六月滋味也 五行木老於未 象木重枝葉也」と難しい解になっている。「未 味也」は、声訓と言われるもので、同音でその義を示そうとするものだ。これが音韻学では意外に役立つのだが、ここでは端折ることにする。
「六月滋味也」は、段氏玉裁によると『史記』律書の説とほぼ同じで、万物すべて成り滋味があると言い、また「五行木老於未」は、五行説では、木が未で老いて枯れることを言う。
最後の「象木重枝葉也」は、木の枝葉が重なっている姿を写した象形字に解している。
「未」「末」はいずれも木に関連した字であるから間違えやすいというのは、私自身への言い訳であり、こんなことで良い訳がない。これは、無能な自分へ自戒のために書いたのであって、皆さんならこんなことは無いでしょう。