真桑瓜

マクワウリの歴史は長い。この系統のウリが列島に伝わったのは相当古いらしく、いわゆる弥生時代の後期遺跡とされる奈良の唐古・鍵遺跡で種子が発見されているそうだ。十二世紀ごろから美濃国本巣の真桑村でよく作られていたのでマクワウリの名がつけられたという。根気よく種を選別してきたのだろう。
私の理解するマクワウリは、やや長細く、色は緑または薄緑である。表面にへこみがあり、縦方向に筋になっている。同じ形で黄金色に熟したものを見たことがあり、やはりマクワウリと呼ばれていた。一説では、金瓜とか黄金マクワウリと呼ばれることがあるようだ。
これに対し、この辺りでコウセキウリと呼ばれる種類がある。マクワウリと比べると、皮に筋がなく、やや丸みを帯びた黄金色の瓜である。「黄石瓜」と表記されているのを見たことがある。コウセキウリは、マクワウリを含め、この種の総称とも言われる。
ところが、私の記憶ではこれをキンショウメロンと呼んでいたと思う。出身地が違うので、異なった呼び名が頭に残っているのかもしれない。
私は、瓜が好きで、漬物用の「かりもり瓜」を栽培したこともある。畑をやっても殆ど何もうまくいかなかったが、なぜか瓜類はかなり採れた記憶がある。好きこそものの上手なれかもしれないし、私でもできる簡単な作物だったのかもしれない。かりもりが、少しずつ大きくなるのが不思議だったことを覚えている。畑へ出る前に瓜が頭に浮かんだものだ。
瓜と言えるかどうか、少年時代に、スイカの残った白い部分を塩で一夜漬けにしたものも好きだった。やはり漬物として食べていたと思う。今思えば、これも瓜の仲間とみてよさそうだ。
古漬けに関しても、既に中高生辺りで、奈良漬が好きだった。早くから瓜の旨さに目覚めていたのだろうか。高価なのでたまに食べていたに過ぎないだろうが、古漬けの美味しさが分かっていたような気がする。特に茶漬けやおかゆとの相性がよかった。
コウセキウリは生食する。私は、皮を剥いてからは、洗わない。内側のゼリーみたいなところの風味がよいからである。香りも甘みもほのかで、強く自己主張しないのがよい。メロンの系統は、甘さや香りが強すぎて、すぐ食傷気味になる。
週明けに同郷の客人がある。台所にコウセキウリが一個ころがっている。これをすぐに食べてしまうか、彼らが来るまで待つか。彼らがこれを何と呼ぶか楽しみだ。
まてまて、食ってしまえばよいではないか。それほど珍しいものでもないし、明日、もう一個買えば済む。