水切り
流しにある水切り台ではなく、石投げのそれである。散歩の途中川へ下りれば、遠投と水切りをやることが多い。徐々に話を起こしていけばよいのに、本日はちょっとばかり急ぐ。
真冬の川だから、両岸に固くなった雪や氷がある。狙いは石だが、何気なく固まった雪を投げてみると、トントントンと滑るように水を切る。偶然かと思い、何度かやってみても、すべてうまくいく。
そこで透明になった厚さ一センチぐらいの氷を、なるべく水面と平行になるよう投げてみると、はるかに石より滑らかに飛んでいく。ハハーン、そういうことか。
雪や氷は水より比重が軽い。水の上へ投げてみれば、水に浮きやすいわけだ。かなり角度をつけて投げても、沈まずにやはりある程度水切りをする。
とは言え、これでは合点がいかない。やはり、石でやってみなければ気が済まないのである。
川面は毎日変わる。風の強い日は波があってやりにくい。ざわつく程度なら問題は少ないし、べた凪ぎの日はベストといってよい。
となれば、焦点がいよいよ石の選び方、投げ方に移る。公式に水切りの大会が行われる所もあるようだし、きっと熟練した人も多いだろう。彼らに対抗しようとしているわけではない。以下は、あくまで私がうまくいった例を思い出しながら書いているにすぎず、法則性を述べているわけではない。
私は、手にぴったりした、やや大きめの石を選ぶ。なるべく薄いものにするが、それほど気にしない。なぜかは知らねど、ごつごつしたものは避ける。特に端が丸みを帯びて平たいものを探す。
投げ方は、誠に難しい。なるだけ水面と平行に投げようとして横手投げすると、力加減にもよるだろうが、一回目のジャンプが大きくなって二回目以降が続かない。スリークオーターにしても、力が入りすぎると沈んでしまう。そこでやる気を抑え、力を抜いて、横手で投げるとそれなりに飛んでいく。
なぜこんなに拘るかと言うと、近ごろ孫がうまくなって、私よりやや回数が多いからである。何だか彼なりにこつを会得しているようで、嬉しいような、悔しいような。
遠投や的当てなら今のところ私の方が勝っている。水切りでもまだ戦えそうな気がして、ファイティングポーズをとっているわけだ。
くれぐれも周りに人がいないことを確認してからやってもらいたい。