台風のあと

ひどい風だった。山間にある小さな町なので滅多に強い風は吹かない。これまで雪や雨の経験があっても、風がこんな惨禍をもたらすとは迂闊だった。
思い起こすと、八月の初旬は干ばつで二週間以上ほとんど雨が降らなかったが、一転してお盆のころは大雨、郡上でも土砂崩れがあった。高鷲や白鳥は1000ミリを超える雨が降りあちこちで被害があった。
そしてこの度の台風である。雨風共に強かったのは事実だが、この前と比べると雨自体はそんなに降らなかった印象がある。
我が家は大屋根の修理が終わったばかりなので、屋根が飛ばされるというような大事にはならなかった。ただ、久しぶりの雨漏りに苦戦した。これまでの大雨は強い風が吹き込むことがなかったので凌げていたが、今回はダメだった。心配していた通り、境界付近で切られた屋根の水養生が不完全であること、台所を増築した折のミスが重なり、やはり強い雨に風が伴うと雨漏りした。
それなりに対策を講じていたので、漏れた量はそれほどでもなかった。それでもこの時代である。雨漏りは精神にもダメージを与える。しばらく漏らなかったので余計にしんどかった。
それでも、これだけで済んだのはどうやら幸運だったようだ。我が家では、何回か明かりがチカチカしていた程度で気にもならなかった。しかし、いつものように気軽に那比へ出かけるとまるで別世界。寺坂のトンネルを出ると亀尾島筋で、あちこちで杉が折れたり倒れたりしている。那比川筋に入っても、何やら雰囲気が違う。喫茶店までの道中は片付けが済んでいたらしいが、うず高く杉の枝が積まれている。喫茶店へ行くと「停電のため休業」の張り紙。やっと状況が飲み込めた。
杉の倒木が至るところにあり、交通を妨げ、電線を切っていたのだ。主が迎えてくれ、事情を説明してくれた。亀尾島筋でも停電だと聞いて、やっと凄まじさが理解できたような次第。
そう言えば、和良筋でも停電だったらしいし、高鷲や白鳥でも広範囲に停電があると聞いていた。が、これほどとは思わなかった。郡上一帯で停電になったと言っても過言ではない。
先月からの雨が残っていたのだろうか。台風の雨だけだとすると、あまりに簡単に杉が倒れていることにならないか。
これまで土砂崩れや雪による倒木は何度も経験しているが、杉林の何と風に弱いことか。十分な間伐をしない杉やヒノキ林は、根の張り方が十分でない。風を受ける林の周辺部は内側に光が届かないので、枝が外に伸びて木のバランスが良くない。末口一尺もありそうな大木が倒れている。これはもう社会問題である。

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