平の地名

何もここに限った話ではなさそうだが、身近な郡上について考えてみたい。平(ヒラ)は地域によってはカイツに劣らないほどあるので今回は概観に留め、地名の面白さやら深さが伝われば望外の喜びである。平(ヒラ、ダイラ)は小字だけでも二百以上あり、通称地名を合わせれば更にその数が増えるわけで、山間地に住む者がどれほど平地に焦がれていたかが分かる。

仮に分類すると、

1 地形地名 平(タイラ)、小平(コダイラ)、上ハ平(ウハダイラ)、野平(ノビラ)等、

2 開拓地名 田平(タビラ)、田之平(タノヒラ)、新田平(シンデンビラ)、井平(ヰビラ)等、

3 文化地名 荒神平(コウジンビラ)、堂ガ平(ドウガヒラ)、一ノ平(イチノヒラ)等、

4 その他 歩危平(ホキヒラ、ホキビラ)等、

に分けられそうである。

地形地名については、旧明方の羽根平(ハネダイラ)、高須の「梨ノ木平」(ナシノキダイラ)など「タイラ」「ダイラ」と呼ばれるものが入るだろう。もとの地形が平らであったから、そのまま地名になったと解釈するわけだ。これに分類できるのは十例ほど。

開拓地名と考えられるのは、和良の田平(タビラ)、相生や小駄良筋の原などの「田ノ平」(タノヒラ、タノビラ)、中坪の田中平(タナカビラ)、美並白山の井堀平(イボリビラ)などが考えられる。

文化地名としては、初音の神明平(シンメイビラ)、和良澤の「寺平」(テラヒラ ?)、八幡柳町の「一ノ平」(イチノヒラ)、小那比の荒神平(コウジンビラ)など寺社や城下に関連しそうな命名がある。

その他、私の友人が説くもので「視界が開ける」と言う意味合いを持つものが考えられる。彼は地形に詳しいので、これも又興味深い。八幡町西乙原などにある「歩危平」(ホキビラ)は郡上では少なからず存在している。「歩危」が川へ落ち込む崖地を表しているのは間違いないとしても「平」がよく分からない。歩危を人馬が通れるように開鑿したのか、山を抜け歩危に出くわしてて視界が開ける意味があるのか。

私は今のところこれらを柱に検証しようとしている。郡上で多いのは前平(マエヒラ、マエビラ)が二十か所以上、横平(ヨコビラ)、高平(タカヒラ)が十か所ほど、大平(オオヒラ、オウヒラ)が十数か所、笹平(ササヒラ)が六七箇所というあたりだろうか。

前平、横平、高平は集落や自家からの方向、位置を示すだろう。大平は地形とみることもできるが、それ程規模が大きいものはなさそうなので、開拓地名のように感じている。開拓なら相当な規模と見られるからだ。これらはほどんどすべて「ヒラ」「ビラ」なので地形地名とは考えにくい。但し、どれか一通りで解釈できるほど簡単ではない。                                               髭じいさん

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