くご(下)

前々回は「くご」について菅の一種と見る仮説を紹介した。今回は少しばかり前のめりして考えてみたい。

私は郡上に散在している「すごう」と「くご」が関連すると解している。「すごう」は「巣河(明宝)」「洲河(西和良)」「巣郷(高鷲 鮎立)」「須小(高鷲、大鷲)」「寿古(美並山田)」など多様な表記がなされているが、音は全て「スゴウ」「スゴ」であり、同系統とみてよかろう。

私はこれらを辿れば「菅生(すかふ、すごう)」へ行きつくと考えており、植生としても音としても結構自信をもっている。菅が生えるのは湿地であり、技術さえあれば、簡単な作業で水路ができるので田畑が開発されやすい。

郡上に関して言えば、明宝の場合は「巣河(すごう)」の中に「久後屋(くごや)」という字があるし、西和良の洲河(すごう)は大字で「九合(くご)」が小字である。まだ踏査していないが、やはり美並の上田に「須郷洞(すごうぼら)」と「久込(くごみ)」がある。これらから「くご」が「菅生(すごう)」に関連すると考えたわけだが、「くご」の語源はよく分からない。

それでは「くご」の意味は何なのか。私の知る限り、これも又こちらで伝わっているものはない。郡上近辺では、関市、美濃市、美濃加茂市、加茂郡、山県市など広く分布しており、愛知県などでも見られるようだ。だが意味について、これというはっきりした定義には至らない。

菅は笠、蓑、縄、背負い籠などの材料として使われてきており、背が低くて柔らかい種類がこれにあたるのではなかろうか。方言で「くぐ」と呼ばれることがあるし、用途に関わらず束にするだろうから、「くぐまる」「くくる」あたりに拘ってみたい気もする。

明宝の場合は「すごう」に「くご屋」という小字があったが、この筋全体が「気良(けら)」だから、これもまた菅に関連するかも知れない。製鉄の際に出る「鉧(けら)」がこの語源として考えられることがある。この近くには知られた畑佐鉱山があったので根拠がないわけではない。ただ、気良筋自身に製鉄遺跡があったという話は聞かないし、こう言った専門知識を必要とする語を地名につけるのは左程多いわけでないので不安がある。

「気良(けら)」は高鷲にやはり「気良ケ洞」という筋がある。たたらの話が伝わっているとは知らないので、やはり日常の生活必需品と考えたい。とすれば、郡上ではないけれど「蓑」を「けら」と呼ぶ地域があるし、萱の束ねたものと解されることもある。

こういった仮説は地域の不信を引き起こすことがあるので、時間をかけて慎重に取り扱う必要がある。まあこのような考え方もあるということで、緩く考えていただければ幸いである。                                               髭じいさん

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