場のつく地名

今回は郡上における「場」のつく地名を取り上げ、幾つかの面を楽しんでいこうと思う。洞(ほら)や平(ひら、たいら)などはまだ十分に解明できていないのに対し、場(ば)は結構戦える気がする。

場と言えばまず馬場(バンば)が思い浮ぶ。郡上には白山三馬場の一つ、美濃馬場がある。またこの地には万場、萬場、番場などと表記される字があちこちにあって、信仰と関連しない場合もありそうだ。

和良三庫に二カ所、ハマイバがある。「破魔射場」として弓神事が行われたと解することがある。これに関連するのかどうか、伊庭(いば)、弓場という字がある。

的場(まとば)は、通称地名なら八幡の街中にも二カ所あるし、周辺の字でも数カ所確認できる。中世の武家社会を連想して弓の練習場と解されることがあるが、他方で各地にある松葉、松場(まつば)と関連付けて、古く祭(まつり)ごとが行われた所と考えることもできる。

郡上はまた木の国である。伐採や搬送に関連する地名が各地に残っている。木の葉、木洩れ日の場合は「こ」と呼ばれることがあるので、これも含める必要がある。

八幡上之洞、西乙原の春木場、高鷲の春樹場(はるきば)がやっぱり印象に残る。春になって集材するのだろうか。大字中坪には単に木場(こば)と呼ばれる字がある。市島に古場尻(こばじり)、長古場(ながこば)と呼ばれている字(あざ)があり、充てる文字が違っても、やはり集材に関連しそうである。明宝奥住の土場(どば)や美並土場尻(どばじり)など、土場もまた木材などの集積場と考えてよいのではあるまいか。

市島の押ノ場(おしのば)は木馬道で木馬を押したと考えられないか。奥山から木を出すには下りだけでなく押すこともあっただろう。野尻の括場(あげば)は、水運が盛んなら川から上げることも考えられるが、谷筋へ下ろした材を引っ張り上げる場所というような解釈も可能だろう。

これら以外にも、白鳥大島の御殿場(ごてんば)は有力者の家がある場、同中西の元札場(もとふたば)は高札が立てられた場、血取場(ちとりば)は牛馬の悪血を抜く場というように、「場」は特定の機能やら役割を果たす所につくようである。

これでよければ場が野(ばがの)、場が平(ばがひら)、婆野(ばあの)などはかつて何かの目的でつけられた場だったが、よく知られていたために省かれて呼ばれるようになり、更に長い年月を経てその意味が分からなくなってしまったというような経緯があるかも知れない。

私が今悩んでいるのが西和良の「ランダバ」という小字だ。確かだとすれば、ラ行で始まっており他に例が少ない。那比に「ロッサ」、白鳥に「六ノ里(ろくのリ)」があり、通称ながらかつて轆轤村(ロクロむら)と呼ばれた村があったぐらいしか思いつかない。                                              髭じいさん

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