切り干し大根

私は野菜の煮物が好きである。秋から冬にかけて白菜を漬けるのが恒例になっていたが、年寄りだけでは食べきれないので、近頃漬けなくなった。切り漬けにしろ長漬けにしろ、旨く漬かった年は冬の楽しみになっていた。漬けないとなると主菜として煮たり、鍋に入れるのが中心になる。

煮るとなれば、白菜のみならず大根も横綱クラスである。厚めに切ってふろふきにしたり、おでんに入れるのは定番と言ってよかろう。また、短冊に切って油揚げなどを合わせたり、みそ汁に入れるのもお気に入りだ。

若い時から切り干し大根が好きで、弁当に入っていると、水分が適当に有るので飯がすんなり喉を通る。業間の休みに早飯をするのは、それなりに大変で、汁気のある油揚げや切り干しが最適だったように記憶している。ただ鞄の中で汁が教科書に滲んでいたのを思い出す。乾いても煮物の臭いがしていたのに、それほど嫌ではなかった。

近ごろ一人暮らしをすることになり、何回か切り干し大根を肉や厚揚げで煮て食べた。ちょっと気になったのは産地である。私の中では宮崎産が最上位なのに、なかなかスーパーで手に入らない。

愛知産のものは、ここで手に入るもので言えば、きしめんのように太くて長い。戻して食べてみたが、たっぷり量感があるのは当然ながら、私の求めているのど越しの滑らかさはない。太くて白っぽかったので、一日では乾かないだろうし、機械干しかもしれない。

静岡産はこれより細く、それなりの質感が残っていて、風味もよかった。

そして宮崎産は更に細くて上品である。師走に入って冷たい山風が吹くようになり、天気の良い日に一昼夜で干しあがるのを上等とするらしい。白っぽいものと、よく干して色が薄い褐色になっているものを食べた。どちらも美味しいが、私は天日で長めに干したものが好みである。確かに古くなって濃い褐色になったものは風味が落ちるように思う。宮崎産は結構値段がする。毎回食べるにはどうかと思い、手に入るもので済ますことが多い。

郡上でも切り干し大根を作っていたのかどうか知らない。サツマイモをふかして切り、寒風にさらして干したものを食べたという話は何回か聞いたことがある。

そうそう宮崎産の袋には「千切り大根」と書いてあった。気になったので調べて見ると、関西以西は「千切り大根」と呼ぶらしい。となれば、私は明石が本貫なので「千切り大根」と呼んでいたはずなのに記憶がない。

尾張産が江戸まで送られるなど、江戸時代から愛知が大産地だったようだ。陶器を瀬戸物と呼ぶが如く、これにより「切り干し大根」と呼ぶようになったのだろうか。                                               髭じいさん

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