猫の目
我が家に猫が来て、早や半年過ぎた。私に少々アレルギーがあるので、これまで近づけてこなかった。止むを得ない仕儀により、受け入れざるを得なくなってしまったのである。ということで猫は全くの初心者と言ってよく、時々の表情や様々なしぐさについてまだ新鮮に感じられる。
彼女は十五歳を過ぎているので老猫と言ってよかろう。疑り深い表情をする事が多いが、外を伺うとか食事をねだる時などは、若々しく活気ある表情だ。友人宅に居た老猫は、貫禄のある肢体と共に達観したような表情だったことが印象に残っている。猫それぞれに特性があるのかな。近頃顔を見ないところからすれば、既にこの世に居ないような気がする。猫の寿命がどれほどなのかよく知らない。野良猫は早死にする傾向があるという話は聞いたことがある。
彼女には持病があるようで、鼻水を出すことがあるし、一日に何度となくくしゃみをして鼻水やら唾やらを散らかしている。近頃では一々消毒するのも面倒になり、目立ったものだけを拭き取るぐらいだ。猫風邪と言うそうで、若い時から続いている症状らしく、それほど心配しなくてよいと聞いた。
彼女は今私のパソコン机の下で眠っている。和室なので、私のひざ掛けを共有しており、私の足はひざ掛けの下、彼女はその上で丸くなって寝ている。
ちゃんと調べたのではないが、「猫(ねこ)」は「寝子(ねるこ-ねこ)」から来ていると言う。確かによく寢る。彼女が老猫と言うこともあるのか、一日中寝ている印象だ。家を出入りする若い猫なら結構パトロールするらしいが、我が家ではそんな余裕がないので一階の空間に限られていることが影響しているかもしれない。
「猫は炬燵で丸くなる」という歌がある。寝る時には本当に丸くなるんだね。寝る段取りとして回るのは、一番落ち着く方へ態勢を整えているように見える。彼女は反時計回りが多い。時々によって頭の位置が決まっていないところを見ると、その時の気分によるのかな。
頭を内側へ丸めて、中心の位置に据えているように見えるのは理屈に合っている。自分を最小にして、外敵に対し安全を確保するとか体温を保っているとかが考えられる。
人もそうだが猫も老いると、毛や肌の艶が無くなって元気がないように見える。寿命からして彼女もそれ程長くは生きられまい。
一つ不思議なことがある。「猫の目」というのが、非常に変化の急で激しいことを言うのであれば腑に落ちない。彼女は私を睨むことがあり、その時にはめったに自分から目をそらさない。光量により目の色が変わって見えるので、これを言うのかも知れないが、変化としてはそれ程でない気がする。 髭じいさん