洒落た喫茶店
先週末、知り合いの若い女性から「お茶でもどうですか」とお誘いがあった。滅多にないことなので戸惑ったが、彼女の気に入ってる店でいいよと言っておいた。当日、彼女の運転する車に乗って、大和にある閑静な喫茶店に行ってきた。明建神社の近くにあり、綺麗に整備された森の中にあった。
どうゆう経緯でそうなったのかは分からないけれども、結構広い空間の周りは窓側を除きすべて本棚に囲まれている。あまりに本の数が多いので、落ちついて全体を回る気になれないほどだった。私達の座った席に近いところには古典文学の専門書がずらっと並んでおり、それぞれのテーマに関してかなりの冊数を揃えている。この対面にあたる本棚には単行本が多いような印象だった。全体で一万冊ほどあるそうだ。こうなるとお茶の飲める図書館と言う方がいいかも知れない。
どうもこれら全てがある研究者一人の蔵書だったらしい。彼女の気に入っている所と言うので、なかなかのセンスだなと感心した。
コーヒーやらを飲みながら、彼女の活躍ぶりを拝聴していた。現状、彼女に定職はないらしく、色んなアルバイトをしながら暮らしているそうな。
彼女は、基本、アーティストと言ってよい。漫画を描くし、即興で似顔絵なども画くという。木の枝を使ったアート作品も見せてもらった。
以前、彼女の描いたものを少し見せてもらって驚いたことがある。とにかく鶏の絵にリアリティがあった。大学でも研究していたらしく、漫画を見せてもらった時には主人公になっている鶏のクオリティーが水準を超えていると感じたものだ。
ということで、最初は若冲の「群鶏図」について聞くと、あれ程の雄のニワトリが密集していれば、あんなに平和な状態ではありえないと言う。ニワトリは一夫多妻のピラミッド構造で生きており、雄同士は同じような力関係であれば、ほとんど無事では共存できないそうだ。ということで構図自体が実態に即していないかも知れないという意見だった。
もう一つ、雄ニワトリ特有の「距(けづめ)」が描かれていない点も指摘していた。私は初耳だったので説明してもらうと、けづめは雄同士が争う時に使われるようで、若冲がこれを描いていないのには意味があるかも知れないと言う。
彼女はまた頼まれてアート教室の講師もやっているらしい。大活躍であり、なにやかや忙しい生活をしているようだ、私の話も少しはしたが、大体が聞き役だったと思う。
さてこの喫茶店だが、近くに和歌に関する資料館もあり、雰囲気が洗練されている。周りを見ると、何だか意識高い系の女性客が多いように見えた。彼女らは身なりも瀟洒で、静かに楽しんでおり、互いに邪魔になるという事もない。
私は会話が楽しかったので、棚から本を取り出して読めるのか確かめなかった。機会があれば、仲間を誘ってまた行きたいと思う。 髭じいさん
