お台場へ

 お台場というところに行ってきました。小峰公子の妹さんがフジテレビに勤めていて、そのあたりには面白いところがいっぱいあるから案内してくれる、ということなので、一泊二日で遊んできたのでありました。新宿からかいひんナントカ線にのって十数分で東京テレポートという駅に着きました。地上に出てびっくり。「こ、これは未来ではないですか・・・」子供の頃、小学館の交通の図鑑などで見た、そこはまさに未来の都市でありました。地上数百階建てのビルディングに立体交差の道路が張り巡らされ、エアカーが行き交い、人々はつるつるの洋服を着て空中を浮かびながら行ったり来たりしていたのでした。すこし嘘をつきましたが、まあそんなような街がひろがっておりました。
 ビーナスフォートというダンジョンみたいな商店街に行き、お昼を食べました。そして観覧車に乗りました。成田の行き帰りに目まぐるしく色を変えるこの美しい建造物を見ながら、いつかこれに自分が乗る日が来なければ良いなあ、とうすうす頼エをいだきながら生きてきましたが、とうとうその日はやって来てしまいました。観覧車というモノは下から見上げる分にはとても美しくて楽しげでそれは平和な様子をした乗り物なんだけど、ひとたび乗り込んでしまえば、いやおうなしに大嫌いなトテモタカイトコロに連れて行かれてしまう、僕にはたいそう恐ろしいシロモノであります。子供や義理の妹の前で情けない様子もみせられないので、少しでも恐怖を麻痺させるため、お昼にビールをたっぷり飲んでおいたのですが、僕たちの乗ったカゴというのかポッドが頂点にさしかかり、大観覧車が地面に落とした巨大な影のそのはるかかなたに自分たちの影をも見つけてしまったときには、数秒間気を失いました。またすこし嘘をついてしまいました。そんなもの見えるはずがありませんね。ビールが効いたのか、僕は醜態をさらすこともなく生還いたしました。
 そのあと、ペットやさんに行き、ネコアレルギーの発作を起こしかけたり、トイザラスで息子の買い物につき合ったりして「もう充分」というくらいお台場を堪能してホテルにたどり着きました。買い込んできたスパークリングワインでとりあえずのお疲れさま。窓からの夜景は絶品でしたが行き交う飛行機を眺めながら、テロのことを思わずにいるのはむづかしいことでした。地球上の反対側では戦争が始まっているというのに呑気に夜景を楽しみながらワインを飲んでいる自分達にあまり注意を向けないようにしながらどんどん飲み進んでいきました。
 翌朝、朦朧としながらチェックアウトを済ませ、子供が乗りたがった「ゆりかもめ」にとりあえず乗ってみました。何の目的もないので終点のいっこ手前で降りると、またしても未来都市であります。「うーん、なにか来た覚えがあるなあ。」とつぶやくと、小峰公子の発言によって、僕はZABADAKでいちどここにあるZEP TOKYOというライブハウスでコンサートをしていたことが判明しました。アニメフェア2003という催し物があって、たくさんのダフ屋が出ていましたが、未来の街にも「馴染む」こと無く異端で存在を続ける彼らの姿に不思議なたくましさを感じました。巨大なノコギリが地べたに刺さっていたり、バンデール星人のような巨大な建物があったり、なんだかあらゆるモノが巨大で、「もう、いいやぁ」というような気分になったので、今回のメインイヴェントでもある小香港でのお昼ゴハン、にくりだしました。フジテレビの向かいのビルの2フロアぶんまるまる香港の街を持って来た、これまたダンジョンみたいなテーマ商店街です。数ある店の店員さんの多くが現地の人で、素敵にうさんくさい雰囲気を出していました。売ってるモノのほとんどが「開運」と「健康」にまつわる、まあいってしまえばがらくたなんだけど、香港の不思議的魔力のせいでそれらのがらくたが宝物に見えてしまうのです。以前ホンモノの香港で、この魔力にやられた僕は手の中でごりごりしてると健康によいという、音の出る銀の玉二個セット、というまぎれもないがらくたをしこたま買い込みました。後にその始末に大いに困る、という苦い経験があったので今回は自分を強く律しました。ディジリドゥ3800円、や竹の周囲に弦を張ったコラまがいの不思議な弦楽器の魅力に抗うのは至難でしたが今、負けなくて良かった、としみじみ思います。
 「飲茶」の名を借りた打ち上げ的お昼ゴハンはとっても美味しかったです。紹興酒で出来上がった大人三人子供ひとりの集団は、いろんなお店を冷やかしたり暖めたりした後、ようやく解散いたしました。
 へろへろになって家に着き、一眠りしてから何故か今頃「スターウォーズ2」を鑑賞。ハンソロやルークのいない銀河に馴染めず、共感の無いまま終了。人生のある部分であれほどまでに熱中した作品の、継続の挙げ句のこの状態にすこし考え込んでしまいます。本当に「継続は力」なのか?僕自身にもふりかかるキビシイ問題ではあります。
 DVDを切ると画面にホンモノの戦争が現れました。さっきまでのドロイドの大群と米軍の戦車の行軍があまりに同じ有様だったので、笑ってしまいました。笑って、悲しくなりました。戦車の中には生身の人間がいて、発射する砲弾の先にも生身の人間がいることが、アタマではわかっても全く実感できません。自分がこんなに鈍感な人間であることにびっくりして、嫌になります。この無感覚こそが人間をこんな世の中に連れてきた元凶なのかもしれないなあ、などと考えております。

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