熊と花粉症

 私の住む郡上市八幡町は、美濃中部で福井県境に近く、山と清い川に恵まれた閑静な地である。ところが最近、町の至る所で熊が出没し、心穏やかでない。
今年は相次いで台風が列島を襲い、この地方も相当ダメージを受けている。山では木の実も相当落ちてしまったらしく、腹をすかせた熊が冬眠の準備もできず里まで降りて来たのであろう。
熊の出没するのが一過性で来年以降出てこないことを祈るばかりだが、人間に近づいて味をしめた熊は、山で食料になるものが回復しても、再び里に出てくる心配がある。
直接の原因となったと思われる台風は、単なる引き金に過ぎないような気がする。
戦後、奥山のみならず里山でも杉、檜などの植林が大規模に行われ、熊の生息に適した雑木林が劇的に減ってしまった。これらの針葉樹は、実を結ばないのみならず、保水力も左程でない。手入れの行われない人工林は、洪水の原因にもなるし、疫病神なのである。
私は例年、春先になると杉花粉、初夏になると檜花粉に悩まされる。何とか気合で立ち向かいたいが、なかなかそうもいかない。これも山を杉・檜の純林にした結果で、失政を詰りたくなる。
熊と人が上手に住み分けでき、私の花粉症を癒す方策は俄には思い浮かばない。
まず山林地主が多様な価値観を持つ必要がありそうだ。既に再投資する力を失っている人も多いだろうが、幸い日本はモンスーンの国で、間伐を徹底して行えば自然に適木が育つ環境なのである。
また熊のみならず猪、猿、鹿などの被害も目に余るものがあり、自治体単位でも継続した「獣害対策専門チーム」の編成をお願いしたい。
花粉症が国民病になってしまい、たびたび熊が里に降りてくる現在、山林の整備は急務であり、できることから始めなければなるまい。

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