石榴  ―海外編―

題名からして、難しそうに見えるのがいけない。人間がこなれていないから、どうしても堅苦しくなってしまう。だが、今回は罪のない話題を目指している。石榴は、「ざくろ」で、まあ果物といってよかろう。
世には、うまい果物であふれている。熱帯性のバナナやマンゴー、温帯性のかんきつ類や柿、もう少し寒いところで作るリンゴなど、ありとあらゆるものが手に入る。だが果物の王様がドリアン、女王がマンゴスチンと言うのが通り相場で、反対意見があっても、これらが上位にくることは避けられない。
まずバナナ、ライチやランブータンにはまった時期がある。その次はグアバやジャックフルーツで、何となくパパイアやマンゴーに目が向くことはなかった。これらが美味いことは言うまでもないが、マンゴスチンを初めて食べたときは衝撃であった。気品のある香りと、溶けるような舌触り、喉越しの軽やかさなど、驚くほどのうまさであったことを思い出す。バナナにしても、木で完熟したものは格別の香りがあって、なんとなく歯切れもよかった。
だが食べなれてくると、糖度が高すぎて、これらの多くが「くどい」と思える時期がきた。
このあたりで、気に入ったものがスイカや石榴である。乾燥地帯でつくるスイカは、太陽と向き合っているからか、香りが凛としている。石榴は日本でつくると、酸味が強すぎ、必要な甘さがなく渋みが残るように思う。熱帯の石榴には奥深い香りと爽やかさがある。スイカや石榴、グアバやスターフルーツなど、たっぷり水分があって、それぞれの酸味と香りを楽しむものが上位にくるようになった。今、私のナンバーワンは石榴である。
学生時代、仲間と果物のランキングで遊んだことがある。出身地の違いが、好みの違いに繋がっているのが面白かった。私は、出身地のみならず、年齢によっても好みが段々変わるように思う。この話は四十代前半のことを念頭に置いているが、石榴については、今も考えは変わらない。