川の事故

日本中どこへ行っても暑苦しい。お盆を過ぎても、連日、猛暑を伝えている。私は今年も休みが取れて、ありがたいことに、何日か骨休めができた。律儀に帰郷される方は、疲れきって戻った人も多かったのではないか。私は郡上を一歩も出ず、朝から晩まで、帰郷していた孫と虫取りや川遊びなどをしていただけだが。
徹夜踊りの何日目かに、新橋から飛び込んだ青年が流されて死亡した。彼は徹夜で踊り、朝方、何回か橋から飛び込んでいたそうだ。数年前にも、高校生だったかがやはり同じ場所から流されたことがあった。
死亡原因がはっきりしないのに言及するというのも大胆だが、こういった悲しい事故を繰り返さないようにするのが年寄りの責務かもしれないと思い、書くことにした。
私も郡上に引っ越したばかりの若い頃に、死ぬような経験をしたことがある。海辺で育ち、かつて水泳部にも所属していたぐらいだから、泳ぐことには相当自信をもっていた。たまの休みのことだったと思う。吉田川と長良川の出会いで川遊びをしていた最中のことだった。誰かと一緒にいたような気もするが、今となってははっきりしない。缶ビールを何本か飲んで体がほてってしまい、川に入って冷やそうとしたことを憶えている。
川幅も広く途中から深くなって泳ぎやすそうなので、確か吉田川の左岸から入った。すこし泳ぐと、長良川本流に合流するあたりで、水面の温度が急激に上がり、水中では水温が相当冷たいところに出くわした。そのあたりで心臓が「コトッ」と音がして、意識が遠のくような状況になってしまったのである。
幸い、海で似たような経験をしていたからか、沈んでいきながらも割合慌てなかった。海でも海峡となると相当早く水が流れている。少し沖に出ると、穏やかな海面近くでは温度が高く、水中では冷たいところがある。そういう場所では体調に異変が起こりやすい。無謀にも私は一人で沖に出て、両足がつってしまい、おぼれそうになったことがある。その時は、数百メートル東の方へ流されながら、手をぼつぼつ動かしてなんとか岸へたどり着いたことを憶えている。
だからという訳でもなかろうが,沈んでいくのに、割合落ち着いていたと思う。落ち着いてさえいれば、かなり息はもつものだ。少し下へ流されながらも、運よく足の付く場所にあたり、なんとか対岸まで着くことができた。
海や川は、千変万化の自然であり、プールとは違う。だからこそ楽しいとも言えるのだが、泳ぎが達者な人でも、流れの速い川は用心しなければならない。ましてアルコールを飲んでいたり、疲労していては非常に危険である。自然に敬意を払い、万全の準備をして、不測の事態に備えたいものだ。