<Number>をなぜ<No.>と表すのか

英語を習い始めたばかりの子が、Numberには<o>が無いのに、なぜ<No.>と略して書くのか尋ねてきた。<No.>をNumberと読むから至極当然な疑問であるが、意表をつかれた。かつては私の視野に入っていたようにも思えたが、その時は頭が真っ白になってしまい、途方に暮れてしまったのである。
「調べてくる」と言ってその場をきり抜け、帰宅後、幾つか辞書を調べてみた。しかし、確実な記述が見当たらない。そこで頼りにしている『Webster』をあたってみると、中世英語(ME)で<Number>は<Nombre>となっており、更に古代英語(OE)へ遡れる。これは、動詞形からして、古代フランス語と同根と考えてよさそうだ。
私の単純な頭で、まずこの<Nombre>の省略形が<No.>ではないかと推測してみたのである。が、なんとなく腑に落ちない。
なにかの折に、<Numero>という言葉を聞いたことがあった。そこで、この線をたどってみると、上記の<Nombre>はラテン語の<Numerus>へ遡れるらしく、更にこの<Numerus>の奪格である<Numero>へ行き着く。
<Numero>はスペイン語やイタリア語で<Numero Uno>などとして今でも使われていると云う。英語の<Number One>である。
そこでこの<Numero>の頭文字と末辞を組み合わせて、<No.>になったのではないかと想像してみた。なんとなく後者に手ごたえを感じたが、とりあえずこの二つを候補にしてネットで調べてみると、後者が学説として認められているらしい。
なぜこれが定説になったのか経緯がよく分からないから確信までは持てないとしても、英語でラテン語が略語として使われる例が結構あり、まあまあいけるのではないかと思うようになった。私は恐る恐るこれを解答にしようと考えている。が、だからと言って、前者を捨てたわけではない。
子供の直感は、なかなか手ごわいね。