スパイラル

何も片仮名で題をつけることもないが、「螺旋」では読みにくいし、「ラセン」では分かりにくい人もいるだろう。「螺旋」ならば、「螺」の音が「ラ」で「にし」「にな」「つぶ」「ほらがい」、「旋」音は「セン」「ゼン」で「めぐる」あたり。ここのところ、このスパイラルが気になっている。
先月「忘れ傘」(10/01日付)で、私の田舎ではベーゴマを「バイ」と呼んでいたことを書いた。当時は皆目気づかなかったが、このバイは「バイ貝」を語源とするらしい。そう言えば、コマの円錐面に渦巻き模様が鋳られていた。原形が巻き貝だったからに違いあるまい。
次は玄関の戸をロックする金具の話である。形状からかクレセントと呼ぶことがあるらしいが、恥ずかしながら、これが一般名かどうか知らない。我が家の玄関はアルミ製の引戸で、上下にかなり厚いガラスを張り付けている。三十年以上が経過しており、相当古い型である。直接ネジを締めるのではなく、アルミサッシの部分に基盤をネジで固定し、手動でフックして掛けるようになっている。
乱暴に扱ったつもりはないから、まあ金属疲労あたりで、フックを受ける側が外れてしまったのだろう。ネジ穴が緩んでしまい、一サイズ大きいネジでやってみても締まらないし、困り果てて友人に相談した。
すると、つぶれたネジ穴の部分に一サイズ大きいネジを切るのが簡単だと言って、さっさと直してくれた。薄いサッシへ新たにネジを刻んだわけだ。刻んだネジの部分を見ると、徑が同じで、きれいなラセン状になっている。
私が知ったかぶりをするまでもなく、周りを見ると、至る所に渦巻きが使われている。ネジはこのパソコンの裏にも使われているし、自転車のサドルを受ける部分などにはバネが使われている。
蚊取り線香のような巻き方がアルキメデスの螺旋、巻き貝や螺旋階段などの形はベルヌーイの螺旋と呼ばれるらしい。何となく前者の構造は理解できる気がするものの、私が腑に落ちないのは、径が「変則」に変わっていくタイプで、巻き貝や台風の目のような後者である。
径が同じネジやバネのようなものなら、渦巻き面へ垂直に力を加えればほぼ均一に働きそうなのに対し、径が貝のように大きくなっていくものはどうだろう。
仮に回転の中心へ力がかかるとしても、かかる力の大きさによって、撥ねる向きが一定しないのではなかろうか。まして力の方向がずれるとすれば、初動は勿論、動き全体を予測することが難しいような気がする。

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