低温やけど

關西の人なら「低温だけど」の意味に解釈されるかもしれない。蛇足ながら、「火傷」のことである。
我が家は昔ながらの高床式で、百年以上の歴史をもつ町屋である。少しずつ手直しはしているけれども、建付けは悪くなっているし、二階の床がそのまま一階の天井になっている。かつては二階で繭を飼っていたそうで、さもありなんの構造と言ってよい。
従ってしっかりした暖房が欠かせないわけだが、空調が不調なこともあり、主力は石油ストーブである。しかし夜中にストーブを使う勇気が持てないので、布団の中を暖房するしかなく、もっぱら湯たんぽに頼っている。
すっかり忘れていたが、かつて娘に湯たんぽで低温やけどをさせてしまったことがある。幸い、その時には大事に至らなかったと記憶している。これを忘れず肝に銘じていれば、孫の低温やけどを防げたかもしれない。というのも、ここ数日、彼の火傷のあとを手当てしているからである。
あるいは、彼が都会育ちで湯たんぽの経験がなかったことも原因の一つに考えられる。迂闊にも、使い方をよく教えてこなかった。
思いのほか傷口が深く、なかなか肉が盛り上がってこない。それに加え、傷口がじくじくしたままである。根気よく傷を消毒して清潔に保つほかないようにみえる。
やはり去年の暮れだったかに、彼は足の傷からリンパ腺が腫れて病院へ通っていた。その時には、抗生物質のおかげで治癒した経緯がある。
今回もまた、傷口が膿んでいるようなので、病院へ行くことを覚悟した。が、リンパ腺を痛がらないし、傷口のまわりにも熱がないようなので、三が日あけまで様子を見る気になった。
傷が深かったからか、風呂に毎日入れていたからか、とにかく傷口が乾きにくかった。あるいは塗っている軟膏の量が多かったせいかもしれないし、病院で診断してもらわなかったせいかもしれない。
それでも正月の三日ないし四日になると、少年の再生力か、抉れた部分が盛り上がり傷口もほぼ乾いてきた。まだ一部乾いていないところがあるので手放しとはいかないまでも、本人の痛みも和らいできたようなので、ほっとしている。
今でも、どうすれば最善だったかよく分からない。低温やけどを甘くみているわけではないが、三が日には救急以外に外来の受付をしてもらえないということもあり、直ちに病院へ行かなかったのが長引かせる原因になったかもしれない。
本人が寝てしまったようなので、明日の朝もう一度傷口を見て、しっかり判断したいと考えている。

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