厳寒の温泉行

今年はよくよく那比と縁がある。年明けに那比の温泉へ行けることになった。雪深い宿で一泊する予定である。
一般には家族で温泉へ行くことが多いかもしれない。だが私は、なぜか、気の許せる友人と行くことが多い。仲間も、数人程度なら、多い方がよい。
いつもより雪が早く、なかなか融けない状態が続いている。雨が降っても、途中でみぞれになり、だんだん雪に変わる。こんな時に自転車で通勤すれば、すっかり体が冷えてしまう。
家の風呂もありがたいが、湯船の周りが冷え切っており、体の芯まで温まるというわけにはいかない。じっくり浸かっても汗をかくまでに至らない。思い浮かぶのは、やはり、たっぷり湯につかれる温泉である。
それだけなら日帰りで、一人で行けばよいことになるが、交通手段に限りがあるし湯に浸かった後になんとなくけだるさが残る。
一晩泊るつもりで、仲間とゆっくり世間話でもしながらつかれば、体中が温まるような気がする。その宿では冷泉を沸かした湯らしいが、大した問題ではない。
湯上りに、ビールでも飲みながら、ゆっくり飯を食うことも楽しみだ。今回は近場だから、左程ごちそうを期待しているわけではない。それでも、喋りながら体の温まるものをゆっくり食べれば、それだけで極上だろう。そんなに沢山は食べられなくなってきたので、鍋とおいしい漬物があれば文句はない。
まわりはきっと雪景色に違いない。那比は高賀山と瓢(ふくべが)岳の麓にあり、長い歴史を思い浮かべれば、これだけでも充分楽しめる。それら以外の山にも一つ一つ由緒がありそうだし、年寄りにいろいろ話が聞けるかもしれない。
若い時なら紅葉やスキーと合わせ、壮年期なら海の御馳走などと合わせて温泉を考えたかもしれない。が今となっては、冬枯れや雪景色もまたよい。
年明けというタイミングからすれば、来年も那比とは何だかんだと関わっていきそうだ。はっきりした理由は分からないけれども、一つは瓢岳の「瓢(ふくべ)」の名称にある。「伊-福部」「伊-吹」の語頭にある母音が脱落して「ふくべ」になっているのではないかという仮説を証明したいが、なかなか果たせない。
今回は那比の本宮へ行くことになっている。宮周りの景色をしっかり脳裏に刻んでおきたいと思う。
今、迷っていることがある。少しばかり焼酎でも持って行こうか。湯がもらえるなら、あてでもつまみながら、ゆっくり杯を酌み交わすことができる。

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