蜘蛛の巣
私は蜘蛛を敵視していない。巣が顔や腕などにかかると気持ち悪い上、姿も決してよろしくないが、室内外のダニを駆除してくれるし、蚊などの昆虫から身を守ってくれる。というようなわけで、私はわりあい冷静に彼らを見ることができる。
部屋の中や通路に網があるときには容赦なく取り払うし、条件が整っていれば蜘蛛を駆除する。この間など、玄関に巣を張っていた。直ちに取り払ったのは言うまでもない。それでも庭や軒下にあるものについては気にならないので、取り払うことはしない。
ところが窓の外に張る場合はとまどうことがある。私は、夏場、窓を開けたままにしておくことが多い。我が家では空調が充分でなく、寝苦しい夜もある。普段なら、裏の疎水から涼しい風が入ってくるが、ぱったり止まってしまうことがある。
私の部屋は扇風機を用意しているが、ここ数年使っていない。今年は、熱中症が心配だから、使ってみるか。
窓を開け放していても、網戸があり、普段なら内側に生き物は入ってこない。それでも、明かりを求めて網戸の外には蚊や蛾など多くの虫がやってくる。これを捕食するため、ヤモリなどの他に、蜘蛛が来る。
あまりの熱気のため、夕方あたり、網戸のない窓を開けたままにしておくことがある。本日なぜか窓を開けたまま明かりをつけてみた。案の定、何匹か蜘蛛が巣を張り始める。糸が光に反射して耀いている。なんだか不思議な気がしたが、結局、蜘蛛が巣を張るのをしばらく目近で見ることになった。今のうちにいろいろやってみたいのかなあ。
確認できたのは三匹。外から内に向かって大中小の蜘蛛が巣を張っている。恐らく同じ種類の蜘蛛だと思う。当然と言うべきか、大きな蜘蛛は大きな巣を、中ぐらいの蜘蛛は中ぐらいの巣を、小さな蜘蛛は小さな巣を張っていた。
外側の大きな蜘蛛は忙しそうに大きな巣を作っていたが、暗くなってしまったので、その大きさは見当がつくものの構造はよく分からなかった。
中ぐらいの蜘蛛は、小さなものに比べてややしっかりした糸だったと思う。放射条の糸にほぼ同心の多角形を描いていく。幅は二センチ弱あたり。それから台形の対角線方向へ編み始めたのには驚いたが、法則性は気がつかなかった。
小さな蜘蛛はまず中心を確かめ放射状に短い糸を張る。それから内より小さな正多角形の形に、まずは1.5センチほどの間をあけて荒目に編む。それから2ミリほどの間隔をあけて外側から同心円状にして密に編んでいく。その時には、なぜか、途中で密に編むのをやめていた。つまり外側が密で、内側が疎の状態になっていた。結構繊細な巣になっている。
短時間の観察だったが、いろいろな疑問が湧いてきたのは意外だった。