田舎暮らし

住み慣れた処に得心いかなければ、どこか腰が落ち着かなくなる。都会の人なら、旅を思い浮かべる人もいるだろうし、田舎へ移住することに憧れたりする。田舎には田舎のよさがあるとしても、全てが好いわけではない。
先週だったか、散歩の途中でスズメ蜂の巣を見つけた。バスケットボールほどの大きさになっている。川中の一段低い土手にある桜の木にぶら下がっていた。
例によって孫と散歩する途中、彼の指摘で見つけた。子供たちは繊細なことに気がつく。新鮮な目でこの世を見るからだろう。
歳をとっても毎日新しいはずだが、いつかどこかで見たと感じることが多く、注意深く周りを観察することがめっきり少なくなってきた。狭苦しいことに拘っている私では、何回見ても、魂に入ってこない。
さてどうするか。冬場だからか、周りにスズメバチの姿は見えない。越冬するとは聞かないので、巣は空だろう。処分してしまうことも浮かんだ。
が、私一人ではない。推測が間違っていて、女王蜂が出てくるやも知れぬ。触らぬ神に祟りなし、その時はそのまま通りすぎた。
今思えば、我が家の屋根裏を掃除してもらった時に、ラグビーボールのような形をした巨大な巣を見つけたことがある。何年もかけて作り上げたものかもしれない。目の奥にスズメ蜂が庭の柿にたかっている図が残っている。何らかの関わりがありそうだ。縁起がよいものだそうで、外さずにそのままにしてある。
こちらへ引っ越してきたばかりの若いころ、私は山際のアパートに住んでいた。昔から多いところと聞いていたが、案の定、自転車置き場に小さめのマムシがいた。子供たちも立ち寄るところなので、逃がす気にならず、退治することにした。
マムシが本当に怖いのは、草むらで知らずに踏んでしまうなどし、反撃される場合である。逃げればそれでよいではないかと考える人が多いだろう。その時は、又出てきて子供たちが咬まれるとまずいと考えた。
私はわりあい冷静に蛇を観察できる。としても相手はマムシであり、取り扱いに注意がいる。とぐろを巻いて攻撃せんとする態勢なら正面から立ち向かうことはしない。少しばかり距離と時間をおけば、逃げていくことは分かっている。伸びた状態なら、それほど攻撃力はない。
マムシが逃げ出そうとしたその時に、棒で頭を砕いた。後で分かったことだが、生け捕りにして売ることもできたそうである。それ以後は、何度か見つけても、殺していない。
そう言えば、山ヒルも気になる。川遊びで、何度かひどい目にあっている。田舎の生活がほのぼのしたものとは限らない。

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