ウラシマソウ

ミズバショウはご存知の方が多いかもしれない。郡上市ではあちこちに自生するが、この辺りではひるがの高原のそれが知られている。
私はけっこう見たことがある。地元で行き来するからだろう、咲き掛けから盛りをすぎたものまで記憶に残っている。それほど好きな姿ではないが、冷たい水辺で大きな白い花が群生している様は、それなりに清楚な感じがする。ただ私はよく知らないけれども、花にみえる大きな包みは花でなく苞らしい。
マムシクサは、葉のさやがマムシの斑点に似ており、また花も鎌首をもたげたような姿からその名がつけられたという。確かに、咲きかけの時はあまり気持ちのよいものではない。
姿が恐ろしいだけでなく、地下茎は有毒だし、実や葉など草全部が有毒とされる。ヒガンバナは全草有毒で、根に強い毒があっても、地上の花はあでやかである。かくの如く植物なら何かしら取り柄があるものだが、マムシ草に糸口を見つけるのが難しい。従って私は、マムシ草を見ても興味がわかないし、心も動かない。
この間あるところで、ウラシマソウを一輪生けてあるのを見た。あれこれ説明を聞いていると、余計にその姿が面白く感じた。何となく外観がマムシ草に似ているものの、長い釣り糸みたいなものが伸びている。これを浦島太郎が釣り糸を垂れている姿に見立てたと言う。そう言えば、彼が亀を助けたときに釣り竿を持っていたかな。
ウラシマ草はテンナンショウ屬でマムシ草と仲間である。そう言えば、葉っぱも似ているし、何となく苞も似ている。一目みると、やはりその色にドキッとする。黒っぽい茶色あたり。やはり熟さない実は特に毒が強いそうだ。
だが、釣り糸みたいな付属物がたった一本ついているだけで随分印象が変わるものだ。或いは、一輪挿しにしていたからその毒々しさが和らいだのかもしれない。また薬草として有用だから、印象が変わるということがあるのだろうか。
ウラシマソウの名からすると、人は大概の植物で何らかの取り柄を引き出し、親しみのある存在にしているように思える。
ミズバショウ、マムシ草及びウラシマ草はいずれもサトイモ科に属している。いわば仲間内である。そう言われればそうか。私の見方もいい加減なものだ。
植物に愛情を持つ人なら、きっとマムシ草にもよい点を見つけるだろう。が、私は今のところそこまで行きつかない。
ただウラシマ草には親近感が生まれたので、観賞用まで出世しそうである。生きている間にマムシ草も身近になるチャンスがあるかもしれない。

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