世論誘導

私は今年度、地区会の会計を拝命している。入金なら町会費やら交付金などの項目を明記し、出金ならやはり細かく分類して領収書を貼る。一円たりとも不明な金はない。
領収書の受け取りを忘れたり、金額がはっきりしなくなったものは自腹ということもなくはない。関連文書を添付するに至っては、事ここに至るというべきか。前回やったときにはこれほど煩雑な手続きはなかった。信頼関係がもとになっている小さな自治会でこれほど細かな会計簿が必要かどうか。
近ごろ浮世はこぞって国家公務員の公式文書隠蔽や改竄へ目が行っているように見える。私企業にしても、極秘文書を含め、社内文書をかってに変更したりはできまい。
まして近代国家においては、行政がルールに従って公平に行われ、執行するための文書がいつどこでも公表される状態になっていることが原則である。
これが高級官僚は言うに及ばず地方役場の職員など公職にある者の義務であることは間違いあるまい。
防衛など軍事にかかわるものなど、国家機密として容易に公表できないものならいざ知らず、単に公表するのが政治家や官僚の不利益になるからという理由で、国民の目に触れないようにしようというのは虫がよい。
まして公文書を改竄するに至っては、民主主義の根幹に関わる。子供だましの理屈を並べて、これを隠蔽できるはずがない。徹底して膿を出してしまわないと、歴史の針が逆方向に向くかもしれぬ。公文書の隠蔽、改竄は確かに重要な問題である。国会を中心にしっかり議論してもらいたい。
ただ、これが別目的の手段として使われているとすれば何やらうさん臭い。近ごろ北朝鮮が核兵器開発を凍結するようなポーズをとっているし、米朝会談が行われる可能性もある。彼らが核兵器を廃棄しない以上、私は長距離弾道ミサイルが凍結されても中距離が認められるような合意は受け入れられない。
また、竹島の状況が変わったわけではない。これらからすれば南北朝鮮が平和裏に統一されるようになっても、喜んでばかりはいられない。その統一国家が核兵器を有する状況になれば、本邦の安全保障が危機に陥る可能性がある。
近ごろ尖閣諸島で中国公船がどのような状況なのか報道されることは稀である。北方四島しかり。日本を取り巻く東アジアで緊張が緩み雪解けであるかのように主張するなら、あなた任せの平和論と言わざるを得まい。
すっかり憲法論議が影を潜めた。文書の管理がずさんな現政府が改憲をリードすることがけしからんということで、議論を後回しにすることは許されまい。話は別だ。護憲であれ改憲であれ、この混乱にもかかわらず、ちゃんと深化しなければなるまい。

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