きな粉

明けましておめでとうございます。年を取ると面倒な理屈はかなわないので、とりあえず目出度いことにしている。
正月らしいことをあまりしなくなったからか、単なる冬休みに近い。まあそれでも私にとっては初の体験で、面白みを感じられるものがあった。きなこ餅である。
田舎だから餅は種類が豊富で、なかなか旨いものがそろっている。今年は年末に高黍、栃餅、草餅、白餅を少しずついただいていた。雑煮で食べてもまだ大分残っている。いままで焼いて砂糖醤油で食べることが多かった。海苔があれば、ぐるりと巻いて食べるのが定番である。
元日に限らず、我が家では雑煮を日常で食べる。今となっては、餅の量がそれほどでないので長続きしないけれども、まあ一月中は食べられるかな。
又正月も半ばを過ぎる頃になると、ぜんざいで餅を食べるのが楽しみである。というようなわけで、今まできな粉で食べることはなかった。
「きなこ」は書き方ひとつにも拘りが感じられる。私の頭に浮かんでいたものからすれば、「黄な粉」がよさそうだ。
一説によると「黄な粉」は「黄なる粉」が語源だそうで、色から名づけられていることになる。青大豆を原料したものは「青-きな粉」「うぐいす-きな粉」と呼ばれているそうな。「黄な粉」から「きな粉」の時代が長かったのだろう。
「きなこ」は大豆を炒って皮を剥き、細かに挽いた粉である。上手に炒ると香ばしく、いろいろな料理に使われる。
どういう風の吹き回しか、三が日明けに二種類の「きな粉」が手に入った。一つは炒り具合がとてもよく香ばしいもの。もう一つは黄な粉にすり胡麻を混ぜて黒っぽくなったものである。これは楽しみだ。
頭に浮かぶのは「あべかわ餅」である。勿論白餅もよいけれども、今回は高黍と草餅をレンジでチンして、すり胡麻を混ぜたきな粉をかけて食べた。
餅自体が香り立つ質の良いものだったし、その上胡麻と黄な粉が加わり、奥深い味になった。今まで経験していない食べ方なので身構えていたが、文句なしにうまい。近来にない、贅沢なおやつになった。もう一種類の黄な粉は、二三日うちに食べるつもりである。
但し、頭のどこかに何かスッキリしない滓が残っている。よくよく考えてみると、冷蔵庫に「えごま」が残っている。
この辺りでは江戸時代、米の代わりに税として藩に納入されていたものである。これを軽く擂って砂糖と混ぜ、五平餅に塗って焼くとうまい。
となれば、今年は人生で初めて、正月にきな粉と「えごま」で餅を食べることになる。

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