焼たら

「焼たら」は商品名であって、あれこれ文句を言う筋のものではない。
近ごろ散歩に出ると、吉田川の土手を通るいつものコースと別れ、図書館や愛宕公園へ向かうことが増えてきた。ふと調べ物をしようとか冬枯れの木々が恋しいなど気になることが思い浮ぶ時もあるが、大抵は気分次第である。
一段落して帰り道を選ぶのが楽しみだ。その一つに駄菓子屋の前を通るルートがある。この店は老舗で、郡上では結構知られている。
ここ何年か、孫が帰郷している時にほぼ毎日と言ってよいぐらい通っている。ことほど左様にこれまで孫が来ている時にしか寄らなかった。
つらつら考えてみると、地名のことやら、伝承などを取材する際にこの駄菓子屋へ立ち寄ってヒントを得たこともあった。
あれやこれやで顔なじみになっていたが、一人で入るのは何となく気恥ずかしく、素通りしていた。こんな爺には似つかわしくないと勝手に決めていた。
それでも面の皮が厚くなってきたのか、近頃一人で店へ入ることもできるようになった。まだ多少抵抗感が残っているものの、ぼちぼち立ち寄る回数も増えている。今やランダムに買う段階は過ぎ、好みが決まってきた。
1 ラムネの入ったサッカーくじ。(10円)
2 サラミソーセージは小さな棒になっており、短いものと長いものがある。短いのは10円で、長いのは知らない。
3 キャンディーは結構種類がある。私はフルーツ味の小さめを選ぶことが多い。一個5円で、大きいものは10円やそれ以上のものもある。
4 「うまい棒」のサラダ味やコンソメ味、10円。理由は分からないが、近頃は殆ど買わなくなった。単に気まぐれだろう。
5 テーマになっている「焼たら」は味付けした干したらで、ぺったんこに圧縮したもの。細く長く切っており、マッチ棒より少し長い。10円。
6 この間、店主に勧められたのが「素麺するめ」で30円。
気分次第で他のものに手がいくこともあるが、だいたいこのようなラインアップがビニール袋に入っている。
私が古いタイプのストーブを使っていることは何かで書いた。常に網を載せている。たまたまポケットに入っていた「焼いたら」を焼いてみると、格段においしくなった。ビールや酒のあてとしても十分いけそうだ。「素麺するめ」は更に高級感があるが、いまのところ「焼いたら」に嵌っている。
子ども達の意見では「焼きたら」と呼ぶ子もいるし、「焼いたら-うまい」と主張する子もいる。袋の上には「YAITARA」と書いてある。

前の記事

二進も三進も

次の記事

25年