クレーン

ここで言うのはクレーン車のそれで、建築現場などでよく見かけるやつです。おしゃべり仲間にクレーン操作のプロがいる。よく行く温泉宿にクレーンゲームがあり、やったことがあるとは思うのに、うまくいった記憶がない。

英語の教科書に<crane (鶴)>という単語があり、高校生が難しそうに発音するので、イメージとしてクレーン車を例に出した。その時に「鶴」の首が長いので名付けられたのだと説明した。クレーン車の語源が「鶴」なのだと知ったかぶりをしたわけだ。すると彼は、腑に落ちないような表情をして、「ありえん、そんな話は信じられない」というような反応をする。どうやら彼は姿よりは鶴の大きさに注目したようで、クレーン車の大きさとつり合いが取れないと感じたようだ。彼は「譬えるならキリン車の方がピッタリする」という。なるほど。これなら姿と言い、大きさと言い、クレーン車より分かりよいかもしれない。そう言えば、大抵のクレーン車は黄色に塗られている印象がある。彼の言い方からすれば、小さいころからキリンをイメージしてきたのかも知れない。

となれば、なぜクレーン車と言われるようになったかもう少し掘り下げるよりあるまい。

<crane>には「鶴」の他にも「クレーン車」「起重機」「自在鉤」などの義があり、「クレイン」だけで「クレーン車」になるし「自在鉤」にもなる。クレーン車や起重機は分かるとして、「自在鉤」が鶴の格好をしているのかどうか知らない。自在鉤を使った経験が皆無なので想像するよりないが、横木の下に伸びた棒を首、先を曲げているところが頭で、鶴と見立てているのだろうか。

鶴はこれらの他にもその鶴首の形で例えられる。水道の蛇口をカランと言いますね。なぜ「蛇口」というのかよく知らない。管を蛇とし、水の出る口を蛇の口と見立てているのだろうか。「カラン」はオランダ語の<kraan>に由来するという。これがやはり「鶴」という意味らしい。昔風の蛇口は長い管の先を曲げて蛇口をつくるので、これを鶴に見立てたのなら分かる気がする。ただ今の蛇口は管の短いものが多いので想像してもらえるかどうか不安がある。

実際に鶴を思い浮かべることもある。私は播磨平野の東端で育ったので、田んぼや池などで鶴や白鳥を見ることがあった。上空を渡る姿は美しいし、餌を探して首を上下するのも優雅だと思う。そう言えば郡上に来てからどちらも見ていない気がする。川辺で見る大型の鳥といえば鳶や鷺で、鶴を見ない。

我が家に鶴首の一輪挿しがある。新型コロナが終わるよう、私は首を長くして待っている。                                               髭じいさん

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