難解な地名(上)

郡上に限っても難解な地名が多い。今回は私の力では及ばないものを披露して、私の取り組み方とこれからの課題を示したいと思う。

解明の糸口すら見つからない地名が至る所にある。今回は郡上踊りの「かわさき」に「安久田(あくだ)こんにゃく名皿部(なさらべ)ごんぼ 五丁(ごちやう)だいこに小野(をの)なすび」とある小野を取り上げてみたいと思う。立派な字名なのに、皆目分からないものは次の通り。手ごわいですぞ。

1 ヒッツリ

2 雲京(ウンキョウ)

3 ヒガンデ

4 三十手(さんじって)

このままではまさに一寸先は闇だ。どう取り組むか。まずはその位置の特定から始めるのが常道だろう。これらは恐らく文化地名であっても、それなりに地形地名の可能性が残っている。

さてその次はうろうろ歩き回って情報を集めることになる。地形やら田畑の配置、集落の有り様などいわゆる土地勘というやつを養う。遠くを視れば小野筋から何と高賀山が眺望できるし、信仰の山である稚児山にも近い。地元の長老とじっくり話し込んでヒントを得ることが結構ある。存外これが有力で、頭の中でこねてしまうと出口が見つからないことが多い。

そうそうこの間境界を確認するのに歩いては立ち止まり、ため息をつきながら又歩き始めることを繰り返していると、怪訝そうな顔をして行きかう人がいた。まさに徘徊老人そのものだったようで、彼には心配をかけてしまった。

小野の場合、八幡のほぼ東にあって日当たりが良く、古くは主として畑作地帯だったらしい。「小野なすび」はこのことを示しているが、近頃開発が進んで往時へ遡るのも一苦労である。

一段落すれば土地ににまつわる歴史やら風土などに浸りこむ。これらはどれも当たり前の方法であって書き出すほどのこともないが、今回は全てをさらけ出してみた。

まあこの辺りまでは初心者の心得として大事なところだが、ここらから人によってそれぞれの方法が編み出される。研究肌の人なら郡上から岐阜県、更に中部圏へ似た用例を探し回る。近頃はネット検索が容易になったので有難い。フットワークの軽い人なら、関連しそうなところを車で回るのが有力な方法と言ってよかろう。

地名を言語とみて音義を中心に据えるのを得意とする人なら、古語の用例から語源まで遡るかもしれない。隣の初納(ショノウ)は更に小駄良筋の印雀(インジャク)へ繋がっている。音読み地名が多いことも考慮しておきたい。                                             髭じいさん

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