怪我

もう十日ほど前のこと、自転車で新町を通っていて怪我をした。これだけではああそうかとなるだけだが、幾つか教訓を汲めそうなので披露することにした。

分かりにくい思うので事情をかいつまんで書いてみる。新町の中ほどに老舗の洋服店がある。私はそこで一度も服を買ったことはないし、店の人と話をしたこともなかった。それがいつしか店の前の一角に野菜を置くようになった。缶の中に代金を入れる式の無人売り場である。私は白菜の煮物が好きなので、白菜などが置いてある時には、買ったり見るだけだったりしていた。そんなこんなで最近まで楽しんできた。

怪我をする数日前に、柔らかそうなネギがあったら買ってきてと頼まれていた。連日箱の中を気にしていたのだが、見当たらなかった。

当日も無いだろうと思いながら通ると、何束かネギがあるではないか。反応が遅れて行き過ぎてしまった。慌てて自転車を止め、足を地面につけたまま無理に方向転換をやったものだから、左足のふくらはぎ下あたりを擦ってしまった。傷口は浅かったけれども結構な面積の皮膚がはがれてしまった。それでもまあ、ネギは手に入れたがね。

血や体液が滲んでくるので、夜になって、消毒やら絆創膏を貼った上に包帯を巻いておいた。こんなことは久しぶりだ。「どうしたの」と知り合いに聞かれると、ネギのことを言える訳もなく、話をごまかしておいた。

今回は注意力が散漫になって通り過ぎたこと、慌てて転換したことが直接の原因だが、全体に集中力が欠けてきているように感じる。歳を言い訳にできないから、初心に戻って生き直すほかない。

これをきっかけに思い起こせば、これまで結構怪我をしている。どれも痛かった。こちらへ来てからでもバイクで転んだり、停車しようとして躓いたりした。自転車でも雪道で数回あったし、雨上がりに傘を前輪に巻き込んで転倒したのが印象に残っている。これらの他、旧式のストーブに載せていたヤカンを引っ掛けて足に熱湯を浴びたことも忘れられない。

これらはいずれも日常に慣れ過ぎ、目前に迫っている危険を認識できていなかったことが原因である。また視力や筋力が落ちていることを知りながら、時に忘れてしまい、若い時の感覚で行動してしまうこともありそうだ。若い時なら一瞬にして取り戻せる判断の誤りも、年を取ると対応に時間がかかってしまう。予知能力の減退と合わせ、自分のあるがままの現状を受け入れて生きて行く他あるまい。

忘れ物については、思いついた時点で準備することにしている。これでまあまあ困らない程度にはやれているので、怪我についてもこの流儀でやってみようと思う。                                               髭じいさん

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