国連常任理事国

現在の常任理事国は米、露、仏、英、中の五カ国で、先の大戦に勝利した国々である。六十年が経過しても、この構成に関しては何ら変わらない。
国連は現在、紛争処理機能が低下し、その存在感が薄れかけている。アフガニスタン、イラクなどでは、国連が主体となった紛争処理ができなかった。常任理事国を増やしたところでアメリカを押さえられるとは思えないが、確かに処理能力が増す可能性はある。日本が数十年に亙って国連の財政に寄与してきたのは事実である。従って、全く資格がないというわけでもない。
日本が理事国になるというのは、世界大戦後の枠組みが根本から変わる意味がある。東アジアにおける戦勝国の韓国や中国がこれを警戒するのも尤もである。日本の理事国入りを契機に新たな時代に入ることを阻止し、優位を保ちたい。
中国は、急速な経済発展をしており、政治・外交上も自信を深めている。オリンピック開催も決まった。また、更なる発展のために時間を稼ぎたい。外交上では、日本を抑えながら、資本及び技術の面で寄与させたいだろう。
中国にとって、民衆のデモは諸刃の剣である。中国政府が反日デモの暴徒化を許し、その破壊行為を未だに陳謝しないのはいただけない。また、一転して、暴徒化ではなくデモそのものを押さえようとするのも相変わらずだ。
チベット独立を武力で抑え、台湾併合に向けて軍事力行使をちらつかせ、北朝鮮の核開発で火遊びし、日本の領海を侵犯するなど、テクノクラート主導でありながらその手法は漢の武帝を継承した如くである。これらは中国が大国主義に陥る危険性を示している。
現在、中国は国連の常任理事国である。国益を優先する余り、こんな綱渡りを繰り返せば、先人の積み上げてきた信頼を失ってしまわないか心配である。
アメリカに追随してきた経緯からすると、日本が隣国の意図を無視して拙速に理事国になる必要があるとは思えない。だが、日本がおおいに大戦の教訓を汲み、常任理事国入りして、アメリカ及び中国などの覇権主義に歯止めをかける役割がはたせれば、平和な国際社会をつくるのに幾らか貢献できるかもしれない。

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