根方(ごんぼ)
岐阜県旧丹生川村日面(ひおも)に根方沢上という小字がある。地元の詳しい人を除けば、しっかり読める人は殆んどいまい。「ごんぼぞうれい」と呼ばれている。如何ですか。
「沢上」は「そうれ」「それ」と呼ばれる地区が多い中、奥飛騨では「そうれい」「ぞうれい」と「い」を加えることがあるので厄介だ。この点はいずれ取り組むとして、今回は「根方」に焦点を当てたい。
今年も郡上踊りはにぎやかだった。天気もまあまあで、徹夜踊りが無事終わってほっとしている。九月上旬に予定されている踊り納めが済めば、少しは静かに過ごせそうである。
郡上踊りの「かわさき」に「安久田こんにゃく 名皿部ごぼう 五町だいこに小野なすび」とあって、この辺りの名産が列挙されている。その中に「名皿部(なさらべ)ごぼう」とあり、「ごぼう」と洗練された用語になっている。「かわさき」は書き直されたらしいので、古く郡上地区でどう呼ばれていたのか分からない。
「ごぼう」は「牛蒡」で、大陸原産とされ、本邦へ薬草として伝えられたそうな。漢語では大きなものを表すのに「牛」「馬」を使い、「蒡」はキク科の二年草ということで「大きな蒡」あたりでよかろう。
「根方(ごんぼ)」が「ごぼう」の事とすれば、「ごぼう」に「ん」が加えられ、「う」が省かれたことになる。
地名においては、「新田」が「しんでん」から「しんで」、「神田」が「じんでん」から「じんで」、「天滿」が「てんまん」から「てんま」など「ん」は省かれることが多いが、他方で「馬瀬谷」(丹生川村久手)が「ませだに」が「ませんだに」、「板殿」(丹生川村)が「いだどの」から「いたんど」となるなど、「ん」が加えられる例もある。
又、「う」が省かれる例も、「沢上」が「そうれ」から「それ」になるなど、珍しいことではない。
これでよければ、「ごぼう」から「ごんぼう」へ音便化され、さらに呼びやすく「う」を省いて音転したことになる。
この仮説は満更当てずっぽうという訳でもなくて、小根方(こ-ごんぼう 高山市滝町)というような例もあるし、私の本貫地でも牛蒡を「ごんぼ」と言うことがあったので、割合すんなり受け入れられる。
地名で漢字化されたものは、その土地の人による解釈がなされていることになるので、「根方」は「葉の方」ではなく「根の方」という意味になるだろう。つまり根菜と明示しているわけだ。
今回は、漢字化された難解地名を取り上げた。この過程で、漢字化されているのはあくまで地元民の解釈が加えられているのであって、必ずしもそれが語源に直結するとは限らない例だったことになる。 髭じいさん
