寒い信州の山へ

 蓼科に行ってきました。蓼科には神戸在住のS氏の山荘があり、以前畑を作っていた頃は作業のために足繁く通ったものでしたが、お互いにコドモが出来たり仕事が忙しくなったりでなかなか行けなくなって、畑は休業状態になりました。最近はたまにS氏が山荘を訪れる際に吉良家が空いていればお邪魔して山での数日を過ごさせてもらう、というような形になりました。僕のなんやかんやを終わらせて15日の夜に到着しました。東京も雨模様のとても夏とは言えない気候でしたが山は本気で寒かったです。上着を羽織って日本酒を飲みながら久しい再会に深夜まで話し込んでしまいました。S家のお嬢さんと家の息子は二人とも今年から小学校でこれまでに何度も会っているのですが、忘れてしまったのでしょうか、初対面のように人見知りし合っていました。
 翌日は相変わらずの雨、それでも近くの山に登ることになりました。山と言っても八子ヶ峰という小高い丘への、大人の足だと30分ほどのハイキングコースです。しかし、かなりの急勾配をよじ登るようなところもたくさんあります。割と弱音を吐きがちな家のコドモがついていけるのか不安でした。全然大丈夫でした。子供達は歌などを歌いながら手をつないで登っていきました。激しい段差のところは手をとって助け合ったりしながら、へこたれませんでした。雨は霧に変わり10メートル先の見えないような状況の中を子供達は元気に登って行きました。
 1時間ほどで頂上に着きました。家のコドモにとっては記念すべき初登山でした。山頂にはきれいなシャクトリガがゆらゆらと無数に舞っていました。濃霧の中、静かな時間が流れていました。晴れていれば八ヶ岳や蓼科山、遠く中央、南のアルプスを見渡せるらしいのですが、今日はなーんにも見えません。それでも実に気持ちのいい場所でした。霧に濡れたシシウドにはたくさんの蜂に混じって花カミキリが集まってきていてコドモ達と捕まえて遊びました。いつのまにか彼らはずっと手をつないでいてなかよしさんになっていました。それからは山荘に戻っても片時も離れることがありません。なんだか大人には理解不能なギャグを言ってはケラケラ笑いあったりしています。早くも最後の夜、そのことを知ってか知らずかずいぶん遅くまで起きていました。二人ともとっくに眠いはずなのに、いつまでも今日見た虫の絵などをぐずぐずと描いています。なんだか今夜は大目に見てやりたいような気がしたので好きにさせていたら日付が変わってしまいました。
 朝が来て、また雨でした。子供達のお別れが辛くならないうちに、そうそうに片づけを済ませてお別れをしました。高速に入った辺りで「こんどはSちゃんといつ会える?」などと訊いてくるのですが、それがわからないんだなあ。家に着いたら手紙を書くと良いね。などと答えておきました。