夏の終わりのある一日

 高校野球が終わったのを見計らったようにツクツクボウシが鳴き始めました。夏の終わりを感じさせるちょいと切ない音であります。今年の東京はずーっと梅雨が続いていたようなしょんぼりした夏でしたが、ここ数日きっぱりと暑くなって、盛り返しています。もう終わりなのか、と思わせておいてここぞ、で暑くするなかなか芸の細かい夏と言えましょう。
 しまい込んでいた子供プールを引っぱり出してきて、水を張ってそれにつかり厳しい残暑をやりすごそうと思うのですが、2日前に自転車に乗れるようになったばかりの息子が許してくれません。「いっしょにじてんしゃのろう。」と強引なお誘いがかかります。息子の初々しい姿を見るのは親バカ的うれしさもあるので、つきあいます。近所の道路の往復を延々と続けます。沖縄なみの強烈な日差しにあぶられて30分もするとくらくらしてきます。親子でアタマから水を被り、人心地がつくとまた走り出します。わずか2日で息子の自転車テクニックは目を見張るような上達振りです。ときどき手ばなし運転なども披露してくれます。「あぶないからやめな。」などと言いながら僕も両手ばなしで親の威厳を見せつけます。
 そうこうするうち日が傾いてきます。晩夏だからなのか夕方になると気温が下がり、かなり過ごしやすくなります。近所のS家を誘って、ビヤガーデンへ出掛けます。じとじと雨ばかりで商売あがったりだったに違いない世田谷ビアガーデンはここへきて大はやりであります。気持ちの良いよしずの屋根の下に席を見つけて生ビールを頼みます。息子の自転車乗りこなしをまずは祝って乾杯です。やっぱり夏はこうでなくっちゃ!という納得の瞬間であります。こどもたちはかき氷などを頼み、親たちは枝豆や焼き鳥でだらしなく酔い進んでいきます。しあわせな夏の一日が暮れていきます。

前の記事

寒い信州の山へ

次の記事

夏休み終了